この記事でわかること
・カッターを使ったパターンカットのやり方
・リード線を利用したパターン間接続方法
・ジャンパー線の作り方と半田付け方法
基板の修理や改造のため、パターンカットを行う場合、
内層や付近のパターンを傷付けないためには、適切な工具とコツが必要です。
また、パターン間の接続には、場所と距離に応じて、
適切なジャンパー線を作成することが求められます。
本記事では、パターンカットを上手くやるコツと、パターン間の接続方法を解説します。
パターンカットのやり方
①切断個所を決める
パターンを削除する部分を決めます。
場所を選ぶポイントは以下の事を考慮します。
・信号の出力源の近く
ICの出力ピン付近になります。
これは、パターンがアンテナ線となり、ノイズとなるのを防ぐためです。
・他のパターンが近くにない
カット時に他のパターンを損傷させるリスクを低減します。
②カッターの刃先を基板に出来るだけ寝かせて、パターンを切る
使用するカッターはデザインナイフが適しています。
(私が使用しているものを後で紹介します)
刃先を立てると、刃先が欠けてしまいます。
表面のレジスト下にあるパターンの銅箔が切れるまで行いますが、
この時、銅箔を完全に切断できてなくても構いません。
③同じパターンの近くの場所も切断する
この2点間のパターンを剥がすことになります。
④切れた銅箔部分を刃でめくるように剥がす
この時、刃先だけで行うと刃が欠けてしまうので、
出来るだけ、刃の当たる部分が長くなるようにします。
捲れた銅箔部分をピンセットや先の細いラジオペンチで引っ張り、
もう1か所の切断部分まで剥がしていきます。
完全に切断されていなくても、引っ張った銅箔が切断部分で切れます。
⑤テスターで導通していないことを確認する
⑥切断した部分にフラックスを塗布する
銅箔部分の酸化防止のために行います。
<細いパターンの場合>
他のパターンが近くを平行している場合、
周囲をマスキングテープを数枚重ね貼りしてから切断します。
切るというよりは、刃でパターンをえぐる感じです。
銅箔を剥ぐ作業は、
他のパターンを傷づつけるリスクが高いため行わず、カットだけにします。
この時、切断を確実にするため、2か所カットし、
テスターで導通していないことを確認します。
<太いパターンの場合>
パターン幅が広い場合は金属製の定規を使用することで、
一直線に切ることができます。
パターンを剥がす際は、精密マイナスドライバーを使うのも有効です。
パターンカットに適したカッター
デザインナイフは、細かい箇所をカットするのに用いられます。
鉛筆の様な形状をしており、握りやすく、刃の角度が鋭いため、
対象物に刃先を当てた時の視認性が良いです。
私はNTカッター製のデザインナイフを使用しています。
NTカッターは日本の有名カッター専門メーカーです。
アルミダイキャスト製で、適度な重さ(41g)があるので、
切る時に安定しています。
刃先は30°と45°の2種類が各5枚付属しています。
角度が小さい30°の方が、刃先と対象物の接地面が小さくなるので、
細かなパターンを切りやすいですが、その分、刃先が欠けやすいので、
通常は45°を使います。
また、キャップが付いているので、刃先を保護できます。
リード線による配線方法
パターン間を接続する場合、リード線又はジャンパー線を使います。
リード線はリード部品を実装した時に、
余った部分をカットしたものを再利用します。
ジャンパー線は電線の被覆を剥いた銅線に予備半田をつけたものです。
リード線は細かい配線経路を形成しやすいことから、
接続距離が短く、ジャンパー線の加工・配線が難しい場合に使います。
①リード線を配線する箇所にカプトンテープを貼る
基板表面はレジストで絶縁されていますが、
その絶縁膜は薄いため、パターン上にリード線を配線する場合は
テープで追加絶縁する必要があります。
カプトンテープは絶縁性と耐熱性が高く、
接着力もあるので、基板にしっかりと着きます。
また、通常の絶縁テープと違い、剥がした箇所がベトつかず、
透明な薄いフィルムなので、ハサミで細かい形状に加工しやすいです。
②リード線を配線に合わせてカットし、形状を整える
配線ルートに従って、リード線をカットします。
リードを曲げる際は、手で曲げずにラジオペンチを使うと、直角に加工できます。
③リード線を基板上に配置し、半田付けする部分にフラックスを塗布する
接続部分となる部品のピンと、リードの先端に塗布することで、
半田が付きやすくなります。
④リード線を半田付けする
⑤テスターで導通していることを確認する
この時、測定ポイントはリード線ではなく、
接続したICのリードやピンにしないと意味がありません。
⑥必要に応じて、リードの線の上にカプトンテープを貼る
リード線が長い場合、ずれて他の配線に接触するのを避けるため、
テープで固定します。
ジャンパー線による配線方法
ジャンパー線に使用する電線には、
被覆の内側にある銅線が単線タイプと、撚り線タイプがあります。
単線の方が被覆を剝きやすく、曲げた時の形状を維持できますが、
加工時に銅線が折れたり、熱が被覆に伝わりやすいので、
半田付けに手間取ると、被覆がすぐ溶けてしまいます。
また、半田付けしても取れやすい事から、私は主に撚り線を使います。
撚り線の場合、そのまま半田付けを行うと、
素線が何本か外側に飛び出してしまうのを防ぐため、
素線を撚り合わせてから、予備半田でコーティングします。
<ジャンパー線の作り方>
①ジャンパー線の配線ルートを決める
配線ルート長より、数cm余裕を持った長さにカットします。
これは、撚り線の場合、長い方が素線を撚り易いのと、
予備半田時に被覆が溶けにくくするためです。
②ジャンパー線の被覆をストリッパーで剥く
被覆は数mm長めに剥きます。
これは、基板に半田付けする時に、
ジャンパーが少しでも長いと途中でたわむことから、
短く調整できるようにするためです。
ストリッパーを使う際は、電線径に合ったものを使います。
被覆より深く切ってしまうと、撚り線の本数が減ってしまい、
抵抗値が上がり発熱しやすくなります。
また、単線タイプでも、キズによる断線の原因となります。
(ストリッパについては後で紹介します)
電線に線径表記が無い場合、練習用の電線を用意し、
ストリッパの切断穴を大きい方から順に行い、被覆だけ剥ける穴を見つけます。
丁度良い穴が無い場合は、被覆が完全に切れる手前の穴を使用してカット後、
剥ぐ部分を前後に曲げたり、ねじることで被覆を切断します。
被覆を剝いた銅線部分が基板に触れたくない場合は、
あらかじめ、カプトンテープを基板に貼っておきます。
③撚り線の場合、素線を撚り合わせる
撚り線がバラけるのを防ぐために行いますが、
この時、撚り方が悪いと線が太くなってしまいます。
このため、被覆を長めに剥いておくと、綺麗に撚ることができます。
④撚り線にフラックスを塗布してから、予備半田をつける
フラックスにより、半田が付きやすくなります。
撚った上で半田コーティングすることで、撚り線を単線化し、
基板に半田付けした際に素線がバラけなくなります。
この時、コテを当てる時間が長すぎると、
被覆が溶けてしまうため、短時間で済ませます。
⑤余分な撚り線部分をカットする
<ジャンパー線を接続する>
①基板上の接続する部分(ICのリードなど)にフラックスを塗布してから、
ジャンパー線を半田付けする。
②半田付けした部分の近くのジャンパー線をマスキングテープや接着剤で固定する。
③配線に合わせて、ピンセットやラジオペンチで形状を整える。
④もう一方もフラックスを塗布してから半田付けする。
⑤テスターで導通を確認する。
ワイヤーストリッパについて
私が使用しているワイヤーストリッパを紹介します。
製造元のベッセル(VESSEL)は、今から100年以上前の大正5年に
日本で初めてドライバーを量産した歴史あるメーカーです。
10年以上使っていますが、使いやすさ抜群です。
刃の部分に電線の太さ(AWG、mm)がついているので、
使用する電線のAWGに合わせれば芯線を切る心配はありません。
また、グリップ部分には、AWG、mm、mm2の換算表がついているので、意外と便利です。
あと、小型(15.5cm)・軽量(100g)なので、工具箱の中で場所をとらず、軽いです。
★基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています。