この記事で分かること
・基板のパターン幅、銅箔厚の決め方がわかる。
・基板の各層パターンをつなぐビア径の決め方がわかる。
パターン幅とビア径の決め方
■パターン幅の目安は以下になります。(銅箔厚35μmの場合)
<パワーライン>
電源、GND、モータへの電流等、大きな電流を流すパターンの場合
5Aまで :1mm=1Aの目安を適用
<例> 電流 パターン幅
1A 1mm
5A 5mm
5A以上 :できるだけ太くする
ベタパターンの状態から、パターン間の電圧に応じたギャップを設ける。
(パターンを引くのでなく、パターン間ギャップを引くイメージ)
<信号ライン>
0.5A以下の制御信号や通信信号の場合
デジタル回路: 0.15mm~0.2mm
アナログ回路: 0.3mm~0.5mm
0.1mm=100mAを目安に、この範囲から選択
最初はできるだけ太めに設定し、設計状況や使用部品により順次細くしていく。
■ビア径、スルーホール径の目安は以下になります。
径 許容電流
Φ0.3mm 300mA
Φ0.5mm 500mA
Φ1mm 1A
上記の目安となる理由について解説します。
許容電流を元にしたパターン幅の目安
パターンに流す電流に応じて、以下の目安でパターン幅を決めます。
パターン幅:1mm=1A
この目安はパターンの厚さ(銅箔厚)が35μmの場合です。
これを満たせば、パターンの温度上昇を10℃以内に抑えることができます。
※実際はパターン幅1mmまでなら、この目安の2倍の電流を流しても問題ないです。
但し、この目安の上限はパターン幅5mmまでです。
これ以上になると、温度上昇が10℃を超えてきます。
<この目安の根拠について>
下記はパナソニックの基板材料カタログに掲載されている
銅箔厚35umにおけるパターン幅と温度上昇の測定結果です。
パナソニック「電子回路基板材料 総合カタログ」 より引用
ここで温度上昇10℃の曲線を見ると、パターン幅が2mmで3A程度流せることがわかります。
1mm=1Aの目安にすれば余裕があります。
しかし、5mmで5Aになり、この目安の限界になります。
さらに8mmになると7A以下になるので、目安が適用できなくなります。
<温度上昇10℃以内にする必要性について>
基板のパターン温度は100℃を超えないようにします。
それは一般的に使われるFR-4基板の耐熱温度(ガラス転移温度)が120℃程度のためです。
100℃までOKなら、温度上昇が10℃以上でも問題ないと思うかもしれません。
しかし、製品の仕様で周囲温度60℃の場合、パターン周囲温度は
抵抗等の発熱により、更に30℃程度上がることは珍しくありません。
このことを考慮すると温度上昇10℃以内は、理にかなっていると言えます。
この目安を元に配線の種類毎にパターン幅の決め方について解説します。
配線の種類に応じたパターン幅の決め方
<1.パワーライン>
電源、GND、モータへの電流等、大きな電流を流すパターンの場合
5Aまで ・・・ 先程の目安を適用
<例> 電流 パターン幅
1A 1mm
5A 5mm
5A以上 ・・・ できるだけ太くする
5A以上は、パターンを引くのでなく、パターン間ギャップを引くイメージになります。
ベタパターンの状態から、パターン間の電圧に応じたギャップを設けていきます。
※パターン間隔の決め方については別途解説予定
大電流の場合は温度上昇だけでなく、電圧低下とノイズの影響が出てきます。
細いパターンは抵抗が大きいので、大電流だと電圧降下が大きくなります。
パターンの抵抗は、幅1mm 銅箔厚35uの場合、常温で長さ1mmあたり0.5 mΩなので、
パターン幅10mmでパターン長が100mmだと、
パターンの抵抗値=0.5mΩ/10mm×100mm=5mΩ
このパターンに10A流した場合の電圧降下は
V=R×I=5mΩ×10A=50mV
となります。
電圧が5Vだと1%の変化となり、精度が求められる回路では問題となります。
また、大電流パターンに囲まれた面積が大きいと、インダクタンスが大きくなります。
つまり、パターンがコイルのような働きをしてノイズを放出します。
下図のようにパターンで囲まれた面積を小さくすると、インダクタンスが小さくなります。
これにより、温度上昇と電圧降下が小さくなるだけでなく、ノイズも減らせます。
<2.信号ライン>
0.5A以下の制御信号や通信信号になります。
一般的なパターン幅は以下になります。
デジタル回路:0.15mm~0.2mm
アナログ回路: 0.3mm~0.5mm
1mm=1Aを元に、この範囲から選ぶようにします。
最初はできるだけ太めに設定し、設計状況や使用部品により順次細くしていきます。
デジタル回路の方が細いパターンなのは、アナログに比べ電流が低いのも理由ですが、
デジタルはH/L信号であり、しきい値に対して十分に高いか低ければ良いので、
細いパターンによって電圧降下が多少あっても問題ないためです。
※MHz帯の高周波信号の場合を除く
<DIP ICのピン間(2.54mm)にパターンを通す場合>
パターン幅の決め方に、よく「ピン間〇本」という表現を使います。
昔はリード部品のICを多く使用していました。そのリード間隔が2.54mmであることから、
その間にパターンを何本通すかによって、パターン幅を決めていました。
一般的な値は以下になります。
ピン間本数 パターン幅
1 0.3mm
2 0.2mm
3 0.15mm
基板の空きスペースが少なく、パターンの引き回しが厳しい時は、
このピン間に通す本数を増やすことで対応します。
当然、パターン幅を細くすれば流せる電流が減るので、
そのパターンに流れる電流が許容値以内である必要があります。
銅箔厚の決め方
基本は35um、電流を多く流したい場合は70umにすれば2倍の電流が流せるようになります。
4層以上の場合、標準仕様だと外層が18μmの場合もあるので、
その場合は半分の電流になるので注意が必要です。
基板の層構成と銅箔厚
片面(1 層):外層 18μm、35μm(標準)、 70μm、105μm
両面(2 層):外層 18μm、35μm(標準)、 70μm、105μm
4 層以上 :外層 18μm(標準)、35μm、 70μm、105μm
内層 18μm、35μm(標準)
ビア径の決め方
2層以上の場合、パターンは各層に渡って配線されるため、
層間をつなぐビアの大きさも決める必要があります。
目安としては以下になります。
ビア径 許容電流
Φ0.3mm 300mA
Φ0.5mm 500mA
※ランド径でなく、ビア径なので注意して下さい。
スルーホールで層間を接続している場合は部品のリード径で穴径は決まりますが、
流せる電流については同じ目安になります。
※ビアとスルーホールについては「ランド、パッド、レジストとは? 基板の部位名称について」を参照
スルーホールはビアよりも大きいので、結構電流が流せます。
Φ1mmのスルーホールなら1A流せます。
大電流を流す場合は下図のようにビアを複数入れるようにします。
次回はパターン間隔の決め方について解説します。
<以下の記事で、ランド、パッド、レジストなどの解説をしています>
<以下の記事で、基板工作で役立つ工具類を紹介しています>
<ベース抵抗、ゲート抵抗の決め方やオープンコレクタの説明などの記事です>