【簡単解説】オペアンプにつける並列コンデンサの役割と決め方

回路設計



この記事でわかること

・オペアンプに並列にコンデンサをつける意味
・並列につけるコンデンサ容量の決め方

オペアンプに下図のようなコンデンサが接続されている回路を見かけます。

このコンデンサはどのような役割をして、どうやって値を決めているのでしょうか?

詳細な動作を説明するとなると、伝達関数やボード線図などが必要ですが、
正直、わかりにくいと思います。

ここでは初級者が解かりやすくするために感覚的に説明します。

そして、抵抗値やコンデンサ容量を求める計算式については、
その式になる経緯の説明は省略しています。

その理由は、この定数を大きくすれば、
このような効果があるという事を知っていれば、
設計するのに問題がない
からです。

実際の設計では動作試験で波形を見て値を決めるので、
RやCを大きくor小さくすれば
波形がどう変化するかを理解していればOKです。

本記事では3つのケースについて説明します。
ケース1:Cが並列接続されている場合
ケース2:Cが入力に接続されている場合
ケース3:RC直列回路が並列接続されている場合

ケース1:Cが並列接続されている場合

まず、オペアンプの基本回路である非反転増幅回路の出力電圧は
 Vout=(1+R2/R1)×Vin
つまり、増幅率(1+R2/R1)です。

これを踏まえた上で、C1が並列接続された場合を考えます。
この回路の目的は高周波ノイズの除去です。

入力信号が直流の場合はC1はオープン状態と同じになるので無視できます。
通常の非反転増幅回路と同じになり、増幅率は(1+R2/R1)となります。

交流信号の場合、周波数が非常に高いとC1はショート状態になるので、
R2両端の抵抗はゼロとなり、増幅率は1になります。

つまり、周波数が高い程、増幅率が下がるローパスフィルタになります。
これにより高周波信号だけ増幅されずに除去されます。

この増幅率が下がり始める周波数は
 fc=1/(2πR2C1)
になります。

この周波数より高い周波数は遮断されるので
遮断(カットオフ)周波数fcと呼びます。

ケース2:Cが入力に接続されている場合

図のようにC1が入力に接続された場合を考えます。

この回路の目的は直流成分の除去です。

交流信号の場合、周波数が非常に高いとC1はショート状態になるので、無視できます。
通常の非反転増幅回路と同じになり、増幅率は(1+R2/R1)となります。

直流の場合はC1がオープン状態となるとR1もオープンになります。

つまりR1が無限大という事になるので、
増幅率(1+R2/R1)のうち、R2/R1はゼロとなり、
増幅率1になるので増幅されなくなります。

この回路は、増幅率を大きくしたい場合、
直流電圧まで増幅すると、出力が大きくなり過ぎて
オペアンプの電源電圧Vccまで上昇して飽和してしまう事を防ぎ、
交流信号のみを増幅できます。

つまり、周波数が低い程、増幅率が下がるハイパスフィルタになります。

この増幅率が下がり始める周波数は
 fc=1/(2πR2C1)
になります。



ケース3:RC直列回路が並列接続されている場合

ケース1を発展させて、
R2と直列にC2を接続した回路です。

直流の場合
C1、C2共にオープンになります。

R2がオープンになるので増幅率(1+R2/R1)が非常に大きくなります。

交流信号の場合、
ここで、C1よりC2の容量が大きいとすると、
インピーダンスZ=1/jwCより、
C1よりもC2の方がインピーダンスが小さいため、
周波数が低くても、C2がオープン状態でなくなります。

そして、ある周波数に達すると、
C2がほぼショート状態になります。

この時、C1はまだオープン状態だとすると、
通常の非反転増幅回路と同じになります。

つまり、増幅率は(1+R2/R1)で決まるので、
C1,C2の影響を受けなくなります。

つまり、周波数が変化しても増幅率が一定の状態になります。

更に周波数が高くなると、C1もオープン状態で無くなります。
ここから先は、ケース1と同様です。

周波数が高くなると、C1がショート状態になり、
R2両端の抵抗はゼロとなるので、増幅率は1になります。

以上の動作により図のように増幅率が一定の部分が発生します。

ここで増幅率が一定になり始める周波数をゼロ周波数といい、
 fz=1/2πR2C2
になります。

そして、増幅率が再び下がり始める周波数をポール(極)周波数といい、
 fp=1/2πR2C1
になります。

このような構成にする理由ですが、
簡単に言うと、出力の振動(発振)を防止する為です。

出力の振動の原因は出力から入力へのフィードバック信号の遅れが原因です。

ケース1でC1があることで周波数が高い信号は増幅率が低くなると共に、
入力に対して出力が遅れてきます。(これを位相の遅れと呼びます)

フィードバック信号が遅れることで応答性が悪くなり、出力が振動するようになります。

ケース2では、R2とC2回路により、位相を進ませる役割を果たします。
増幅率が一定の領域で、あらかじめ位相を進ませておくことで、
その後の領域で位相が遅れても、全体としての位相の遅れを小さくすることができます。

ここで、位相が進んだり、遅れたりする仕組みですが、
あくまで感覚として考えると以下になります。

<位相が進む>
R2とC2により、周波数が低い信号は増幅率が上がる
→出力が目標値に早く到達する
→位相が進む

<位相が遅れる>
C1により、周波数が高い信号は増幅率が下がる
→出力が目標値に遅く到達する
→位相が遅れる

話を元に戻します。

C1とC2の比率を大きくすることによりfzとfpは離れ、
増幅率が一定になる周波数帯域が広がります。
必要とする信号周波数がこの一定の部分になるようにfzとfpを設定します。

目安としてはC1をC2の10倍程度にします。

例えばスイッチング電源の制御に使う場合、
スイッチング周波数fs=100kHzならば、
fz<fs<fp になるようにC1、C2を設定します。

増幅率が一定領域での値は
 G=1+20k/1k=21倍

ゼロ周波数とポール周波数は
 fz=1/(2π x 620p x 20k)=12.8kHz
 fp=1/(2π x 62p x 20k)=128kHz

後は実機で試験を行い、出力電圧の応答性を見ながらCの値を調整します。

<オペアンプの基本3回路について解説しています>

<オペアンプの出力をシフトする方法について解説しています>

<以下の記事で、基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています>