オペアンプでバイアス電圧を中心に信号を出力する方法 | アナデジ太郎の回路設計

オペアンプでバイアス電圧を中心に信号を出力する方法

回路設計

この記事でわかること

・出力電圧をシフトさせることで、単電源アンプでもマイナス信号を扱うことができる
・出力をバイアスする事で、単電源アンプが苦手な0V付近の出力を回避できる

・両電源アンプを使って、正電圧信号を±信号に変換できる

単電源アンプの場合、出力を完全にゼロにすることができません。
出力を電源電圧範囲一杯まで広げたレール・ツー・レール・アンプでも限界があり、
ある程度の電圧以下は出力が飽和して下がらなくなります。

そのため、オペアンプで電流値を計測する場合、
損失を小さくするため、数mΩの微小抵抗で電圧検出しますが、
入力電圧が数十mVだと、上記の理由でオペアンプが正しく検出できない場合があります。

このような場合、下図の回路のようにバイアス電圧を加えることで、
出力電圧をプラス側にシフトさせることができます。

こうすることで、0V付近の出力を回避し、正しい出力を可能にすることができます。
(下の図はVin=Vin+ーVin-、Vb=0.1Vにした場合)

また、バイアス電圧Vbを電源電圧Vccの半分の値にすれば、
最大 ± Vcc/2の振幅を持つ出力が可能になり、
双方向に流れる電流検出もできます。

本記事では、オペアンプで任意の電圧を中心に信号を出力する回路について解説します。

バイアス電圧による出力電圧シフトの原理

まず基本となる差動増幅回路は下記の回路です。
出力Voutは以下の公式で求まります。

この回路は2つの電圧差を増幅するので、
オペアンプで最も良く使われる回路です。

Vin->Vin+だと計算上、Voutがマイナスになりますが、
単電源オペアンプの場合、GNDより低い電圧を出力することはできません。

そこで、下図のようにバイアス電圧Vbを加えると

となり、Vb分だけ出力Voutをシフトすることができます。

この原理ですが、
イマジナリーショートの考えを用いて説明することができます。

オペアンプの動作において、
反転入力端子(-)と非反転入力端子(+)が同じ電圧になる
という特徴があります。

つまり入力の+と-がショートしたと考えます。
これをイマジナリーショート(仮想短絡)と呼びます。

先程のバイアス電圧を加えた場合の公式は
以下の流れで説明できます。

1.-端子電圧V = +端子電圧V+と考える

 +端子電圧V+は
 V+=R2/(R1+R2) × (Vin+-Vb)+Vb
 となるので、-端子電圧V-も
 V= V+= R2/(R1+R2) × (Vin+-Vb)+Vb
 になります。 

2.オペアンプの三角記号を外す
 以下のような抵抗だけの回路になります。
 V+、V-だった場所をA点とし、電圧VAとします。  

3.R1,R2に流れる電流I1、I2を求める
 A点の電圧VAは、1.より
 VA= R2/(R1+R2) × (Vin+-Vb)+Vb
 になるので
 I1=(Vin -VA)/R1
 I2=(Vout-VA)/R2

 となります。

4. キルヒホッフの法則を適用する
 A点で電流の出入りする総和はゼロになるため
 I1+I2=0
 となります。

 これらの式を下記のように組み合わると、
 初めに示した公式
  Vout=(R2/R1) × (Vin+-Vin-)+Vb
 になります。



バイアス電圧を利用した双方向電流検出回路

この回路の実用例として、
負荷に双方向に流れる電流を検出する場合について解説します。

ここで、バイアス電圧Vbはボルテージフォロワを介して入力しています。
これはVbを安定化させるためです。

ここでは5V電源を抵抗R3とR4で分圧した2.5VをVbとして使用しますが、
抵抗分圧したものをそのままVbとして使用すると、
接続するR1やR2の影響を受けて、正しいVbが出力できなくなります。

ボルテージフォロワは増幅率1倍で、入力電圧をそのまま出力しますが、
これは出力バッファとしての役割を果たすため、出力電圧を一定に保ちます。

次に、この電流検出回路では、
負荷電流±1A流れた時に、シャント抵抗Rs=10mΩにより、
Rs両端の電圧は±10mVになります。

これを差動増幅回路で増幅率100倍にして±1Vの電流信号として検出します。

この時、Vb=0Vだと、通常の差動増幅回路になるので、
in+>Vin-の時は100倍されたVoutが出力されますが、
in+<Vin-の時は単電源オペアンプなのでマイナス出力できずに半波信号となります。

Vbをオペアンプの電源電圧Vcc=5Vの半分となる2.5Vにします。
こうすることで、Voutは2.5Vを中心にした最大振幅±2.5Vの信号を出力することができます。
(実際は最大出力はVccより少し低く、最低出力は0Vより少し高くなるので、振幅は2.5Vより若干小さくなります)

こうすることで、負荷電流がマイナス方向の場合でも検出することができます。

差動増幅回路を使った±信号出力回路

両電源オペアンプを使うことで、正信号を±信号に変換することができます。

例として、0~5Vの入力信号を±5V信号に変換する回路です。
入力信号をVin+、基準電圧2.5VをVin-に入力し、ゲイン2倍の差動増幅回路を構成することで、

入力0V時: 電圧差 0-2.5V=-2.5V を2倍して-5Vが出力
入力5V時: 電圧差 5-2.5V=+2.5V を2倍して+5Vが出力

これによって、入力信号2.5Vを中心とした正負に出力する信号を作ることができます。

また、Vin+とVin-の入力を入れ替えることで、

入力0V時: 電圧差 2.5-0V=2.5V を2倍して5Vが出力
入力5V時: 電圧差 2.5-5V=-2.5V を2倍して-5Vが出力

となり、出力の極性を反転させることもできます。

<イマジナリーショートを用いることでオペアンプの動作を理解する方法について解説しています>

<オペアンプにつける並列コンデンサの役割と決め方について解説しています>

<以下の記事で、基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています>