EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識 | アナデジ太郎の回路設計

EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識

EMC試験

本記事で分かること

放射エミッション試験の基礎知識(試験方法と判定基準)が理解できる。

放射エミッションとは?

製品から空間中に放出して周辺機器に悪影響を与える電磁波ノイズのことです。
雑音電界強度、放射妨害、放射EMI、放射ノイズ とも呼ばれます。

本記事を読む前に以下の記事を読んでおくと、理解しやすいです。

EUTとは?

EUT(イー・ユー・テー Equipment Under Test 被試験機器)
要するに測定対象となる製品のことです。
IEC規格等で使われる略称で、EMC分野でよく用いられます。
※本記事では初級者向けに分かりやすく単に「製品」と記載します。

放射エミッション試験方法

製品から放射される電磁波ノイズをアンテナで測定します。
測定条件は以下の通りです。

・電波暗室で測定する
 外部ノイズの影響を遮断し、室内でノイズの反射を防ぐことができる部屋。
 測定距離に応じて3m、10m暗室があります。
 また、オープンサイトと呼ばれる電波暗室が不要な試験場もあります。

・アンテナの方向 垂直と水平(アンテナの向きを切替える)
 ノイズの垂直・水平成分をそれぞれ測定する。
 (ノイズの振動方向が地面に対し、垂直成分を垂直偏波、水平成分を水平偏波と言う)

・製品を360度回転させる
 製品の向きによってノイズ強度に差があるため、
 ターンテーブルで、ゆっくりと回転させて測定します。

・製品からアンテナまでの距離 3m又は10m
 ターンテーブルの回転中心~アンテナ間でなく、回転時の製品の端~アンテナ間です。
 標準的には10mですが、実際には10m暗室は数が少なく、費用もかかることから、
 3m法で測定し、10m 法での限度値を+10㏈上げて評価することが多いです。
 (距離が近くなる分、限度値を緩和している)

以上の条件で測定して、垂直と水平ぞれぞれのノイズが規定以内であるか判定します。



放射エミッションの判定基準

放射エミッションの国際規格はCISPR(シスプル)になります。
CISPR 11
 ISM機器(industrial, scientific, medical 工業、科学、医療機器)が対象
 対応する欧州規格:EN 55011

CISPR 32
 MME機器(multimedia equipment マルチメディア機器)が対象
 対応する欧州規格:EN 55032
 日本の自主規格VCCI(ブイ・シー・シー・アイ)もこれに対応

規格によって(つまり対象機器によって)限度値が異なります。
また、同じ規格(対象機器)でも使用環境によってクラス分けされています。
 クラスA:工業地域
 クラスB:住宅・商業地域
クラスBの方が基準が厳しい(限度値が10dB低い)

限度値のグラフ(VCCI  クラスB)は以下の通り

3m法で計測した場合の限度値(赤)は標準10mでの限度値(緑)に+10dBしてます。
クラスAの場合は3m、10mの限度値に更に+10dBします。
範囲は30MHz~1GHzで、250MHzを境に限度値が異なります。

放射エミッションについては、
測定したQP(キューピー)値が限度値以下になるようにします。

QP値はQuasi Peakの略で「準  尖頭(せんとう)値」と訳されていますが、
準ピーク値と表現した方がわかりやすいです。
ピーク値と平均値の中間程度の値と考えていれば問題ないかと思います。

放射エミッションの概要については以上です。
限度値を超えた場合の対策法については、以下のまとめサイトで解説しています。

以下の記事で、EMC対策で役立つ工具類を紹介しています。