イミュニティとは? 伝導・放射イミュニティの違いについて

EMC試験



本記事で分かること

・イミュニティ(EMS)試験とはどんな試験なのかわかる。
・伝導イミュニティと放射イミュニティの違いと、その内容についてわかる。

イミュニティとは?

イミュニティは「免疫」という意味です。
つまり、電磁波(ノイズ)を受けても製品が誤動作しないことです。
EMS(電磁感受性)とも呼ばれます。
 ※イミュニティについては、「EMC試験とは? EMIとEMSの規格について」も参照下さい。

伝導・放射イミュニティについて

イミュニティはノイズの伝達経由により、伝導または放射イミュニティに分けられます。

伝導イミュニティ
 有線で伝わってくるノイズのこと。
 外部から電源・通信ケーブルを経由してノイズを受けても製品が誤動作しないか試験します。

放射イミュニティ
 無線で伝わってくるノイズのこと。
 外部から空間を経由してノイズを受けても製品が誤動作しないか試験します。

伝導イミュニティ試験

伝導イミュニティ試験はIEC61000-4シリーズで規定されています。
主な試験は以下の3つです。

・無線周波電磁界伝導イミュニティ試験(IEC 61000-4-6)
 伝導妨害イミュニティとも呼ばれる。
 単に「伝導イミュニティ」で、この試験を示す場合もあります。
 ケーブルに周波数150kHz~80MHzのノイズを注入します。

 この試験で80MHz以下の低周波ノイズによる影響を試験します。
 ※EMCの世界では、数十MHzが低周波になります。80MHz以上の高周波ノイズは放射イミュニティ試験になります。

・電気的ファスト・トランジェント・バースト試験(IEC 61000-4-4)
 略称でFTB(Fast transient Burst)試験とも呼ばれる。
 ファスト(高速)・トランジェント(一時的)・バースト(破裂)なので、
 高速で瞬間的なノイズということになります。
 ケーブルに周波数5k/100kHz、0.25~4kVのノイズを注入します。

 この試験では、外部機器が電源ON/OFFや起動/停止した時に
 瞬間的に発生するノイズを製品が受けた場合の影響を試験します。

・雷サージイミュニティ試験(IEC 61000-4-5)
 ケーブルに0.5~4kVのサージノイズを注入します。
 この試験では、誘導雷によるノイズを製品が受けた場合の影響を試験します。



放射イミュニティ試験

放射イミュニティ試験もIEC61000-4シリーズで規定されています。
主な試験は以下の2つです。

・放射電磁界イミュニティ試験(IEC 61000-4-3)
 放射無線周波電磁界イミュニティとも呼ばれる。
 単に「放射イミュニティ」で、この試験を示す場合もあります。
 アンテナから80MHz~1GHz(6GHz)のノイズを放射して製品への影響を試験します。
 外部にノイズを出さないように電波暗室内で行います。

・電源周波数磁界イミュニティ試験(IEC 61000-4-8)
 誘導コイル内に製品を設置し、50/60Hzの磁界を照射させます。
 商用電源から発生する磁界に製品がある場合の影響を試験します。

静電気放電イミュニティ試験

伝導・放射イミュニティの他に静電気放電イミュニティがあります。
ノイズの侵入経路がケーブルや空間でなく、製品に触れる人からになります。

・静電気放電イミュニティ試験(IEC 61000-4-2)
 製品に放電ガンを近づけたり接触させて、2~15kVの静電気放電を発生させます。

 この試験では、静電気に帯電した人が製品 に近づいたり触れることで、
 静電気放電を受けた時の影響を試験します。

イミュニティ試験の判定基準

イミュニティ試験中及び試験後の製品の状態によって3種類に分類されます。

・判定基準 A
 試験中、試験後も正常動作を維持

・判定基準 B
 試験中は性能の低下がある。
 試験後は自動的に正常動作に復帰する。

・判定基準 C
 試験中は性能の低下がある。
 試験後は手動により正常動作に復帰できる。

この判定基準を元に、メーカーは製品の性能判定基準を設定します。
自分で設定できるので緩い基準にすれば規格クリアを容易にすることは可能です。

エミッションは製品から出すノイズなので規格をクリアしないと販売できないですが、
イミュニティは製品が受けるノイズなので、判定基準が緩くても販売できなくは無いです。

しかし、不具合や故障の多発によって顧客を失うことになります。

各イミュニティ試験の詳細と対策法については、以下のまとめサイトで解説しています。

以下の記事で、EMC対策で役立つ工具類を紹介しています。