EMC試験の費用、試験時間は? EMCサイト利用マニュアル

EMC試験



【本記事で分かること】

・試験サイト毎の特徴がわかり、サイト選びの参考になる。
・EMC試験サイトの利用手順、試験時間がわかる。
・試験時に用意するもの、あると便利なものがわかる。

【EMC試験サイトの種類と料金】

EMC試験サイトはその運営形態によって、以下の種類があります。

・民間系
 EMC専業と、大手メーカーが自社製品の試験以外に外部にも提供している所があります。

 「立合試験」の場合、基本的に試験機器の操作はやってくれるので、
 依頼者は製品のセッティングと動作監視をするだけです。

 料金は一日(9時~17時)で、20万~30万円くらいかかります。
 サイトによっては、依頼者自身が操作を行う「機器利用」が可能なところもあります。
 その場合は、少し安くなりますが、それでも10万程度はかかります。

 料金は高いですが、サービスは充実しています。
 昼食が用意されていたり、無料のドリンクコーナーがあるところが多いです。
 交通の不便な場所にあるサイトでは最寄り駅まで送迎をしてくれる所もあります。

 エミッションとイミュニティをまとめて試験となると何日間か試験するので、
 このようなサービスがあると、助かることは確かです。
 (数日試験すると、60万~70万円とかなり高額にはなりますが)

・財団法人系
 一般財団法人が運営している所です。
 営利を目的としていないので、民間よりは料金が若干安い傾向にあります。
 電気安全環境研究所(JET)、日本品質保証機構(JQA)等があります。

・公的機関系
 各都道府県などが運営している所です。
 東京の場合は、東京都産業技術研究センター(都産技)になります。

 料金は、民間や財団法人に比べると、かなり安いです。
 中小企業は更に低価格になるところもあります。

 電波暗室を使用する試験(放射エミッション/イミュニティ試験)の場合、
    一日 4万~6万円
 それ以外(シールドルーム等)の試験の場合、
    一日 1万~2万円 程度かかります。

     
      3m電波暗室          シールドルーム

出典:東葛テクノプラザ

 基本的に、試験機器の操作は自分達で行います。
 最初に説明は受けるので、操作方法は知らなくても大丈夫です。

 ドライバーや半田コテなど試験で使用する工具も備品としてありますが、
 老朽化していたりして使いにくい場合があるので、用意しておいた方が良いです。

 料金が安いこともあり、特に電波暗室は1~2か月先まで予約で一杯も珍しくないです。
 利用の際は、早めの予約が必要です。

 また、電波暗室は校正で1か月程度使用できない場合があるので注意が必要です。
 校正時期は決まっているので、一度確認しておけば毎年同じ時期にやるので、
 試験日程を決める際に役立ちます。

【EMC試験サイトの利用手順】

試験サイトによって多少違いますが、利用の際は以下の手順で行います。

1.事前に試験内容と製品の仕様を明確にしておく
 試験規格と製品仕様について明確に確認しておかないと、
 問合せした際にサイト側との話がスムーズにいきません。

・製品の仕様
 サイト側から「EUTは何ですか?」と聞かれると思います。
 EUT(イー・ユー・ティー)とは、Equipment Under Test(被試験機器)の略です。
 つまり、試験する製品のことです。

 以下の仕様について聞かれるので、答えられるようにしておきます。
  サイズ・重量
  設置状態(卓上・床置き)
  電源(入力電圧・電流)
  電源供給形式(AC単相/3相・DC・内蔵バッテリー等)

・試験規格
 どの規格で試験するか必ず聞かれます。その規格の概要を把握しておかないと
 サイト側からの質問に答えられなくなります。

<エミッション試験(EMI)の場合>
 国際規格CISPR(シスプル)の以下の2つが代表的です。
  CSPR11:ISM機器(industrial, scientific, medical 工業、科学、医療機器)が対象
  CSPR32:MME機器(multimedia equipment マルチメディア機器)が対象
       日本の規格VCCI(ブイ・シー・シー・アイ)CSPR32に対応

 使用環境で判定基準がクラス分けされているので、これも決めておきます。
 クラスA:工業地域
 クラスB:住宅・商業地域

       クラスBの方が基準が厳しい(限度値が10dB低い)

放射エミッションについては、3m法・10m法どちらでやるのかで
電波暗室の種類(10m暗室、3m暗室)も決まってきます。
大型機器でなければ、3m電波暗室が設置しているサイトも多く、料金も安いので、
3m法で行うことが多いです。
※放射エミッションについては「EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識」を参照

<イミュニティ試験(EMS)の場合>
 国際規格IEC6100-4で行うのが一般的です。
 放射イミュニティ試験は、最大周波数(1G、2.7G、6GHz)によっては、
 対応できないサイトもあるので注意が必要です。

 放射イミュニティ試験も電波暗室でないと試験できません。
 ※放射イミュニティについては「放射電磁界イミュニティ試験の方法と対策について」を参照

2.試験サイトに問い合わせ
 以下について確認しておきます。
 ・希望する試験規格に対応可能か
   上述の【EMC試験サイトの利用手順】で決めた試験規格が、
   そのサイトで試験可能かどうかを確認します。

 ・空き状況の確認
   Webで予約状況が確認できるところもありますが、
   リアルタイムで更新されていない場合もあるので、直接確認します。

 ・料金
  試験当日、試験時間を延長する場合も考慮して、
  延長対応の可否と、その場合の料金についても確認しておきます。

 ・支払い方法
  支払い方法については、サイトによってまちまちです。
  支払日(前払い・当日又は後日支払い)と、
  支払い方法(現金、カード、振込)について確認します。

 ・電源供給
  AC単相なら問題ないですが、
  三相の場合は製品の電源プラグがそのまま使用できるか確認します。
  端子台受けになる場合は、ネジサイズも確認しておかないと
  電源接続時にケーブル修正が発生し、貴重な時間を消費してしまいます。

 ・機材の搬入・搬出
  製品や試験用機材の搬入について条件がないか確認します。
  大型機器などの場合、前日に運送業者による搬入が可能か確認します。
  搬出についても、後日引き取りが可能か確認します。

  また、連日試験を行う場合、日によって電波暗室やシールドルーム等、
  試験場所が変わる場合でも、機材を保管してもらえるか確認します。
  可能なら、都度持ち帰らずに済みます。

3.試験日を予約する
 予約の際は何日前までキャンセル可能か確認しておきます。

4.試験前日に製品を搬入する
 基本は試験当日に持ち込みますが、前日に搬入する場合は、
 サイト側に運送業者名と搬送物の重量・サイズ、送り状番号を伝えておきます。
 (前日は試験場は使用中で持ち込むことはできないので、どこかに仮置きすることになるため)

5.試験当日
 後述する「EMC試験 準備リスト」記載のものを揃えて試験に臨みます。



【EMC試験 準備リスト】

当日持参する必要があるものは以下になります。

・試験申込書
 試験サイトに提出する必要がある場合は準備します。

・試験費用
 サイトによっては、試験前に支払うところもあります。
 その場合は現金(カード払い可ならクレジットカード)を準備します。

・製品と試験機材一式(前日に搬入する場合を除く)
 イミュニティ試験では製品が故障する可能性があるので、複数台用意します。
 難しい場合は、基板や部品の予備を準備します。

・電源ケーブル(製品によっては通信ケーブルも)
 雑音端子電圧、伝導イミュニティ、FTBはケーブル長が指定されているので、
 必要に応じて別途用意しておきます。
  ※ケーブル長については、以下の解説記事を参照
  「雑音端子電圧とは? 伝導エミッションの基礎知識雑音端子電圧
  「バースト、CDNとは? 伝導妨害とFTBについて

・測定機材
 テスター
  たいていはサイトに常備されているが、古くて使い勝手が悪い場合もあるので、
  用意した方が良いです。

 CD-R
  放射エミッションや雑音端子電圧の測定データを記録します。
  ウィルス対策によりUSB使用禁止で、CD-R限定の所が多いです。
  サイト側で用意していますが、有料の場合もあるので事前に確認しておきます。

・工具
 ドライバ、ラジオペンチ、ニッパー、カッター、ハサミ、テープなど
 これらもサイトに常備されている場合が多いですが、用意しておいた方が良いです。
 (※コロナ対策で利用できなくなっているところもあるので注意)

 できれば圧着工具一式(圧着機、圧着端子、ケーブルストリッパー)もあると
 電源接続で端子台のネジサイズが合わない、ケーブル長を変更の場合でも対応できます。

・半田機材一式
 半田コテ、半田、吸い取り器など
 サイトにある場合が多いですが、コテ先が錆びて半田が乗らない等、
 工具以上に使い勝手が要求されるものなので、用意しておいた方が良いです。
 (※コロナ対策で利用できなくなっているところもあるので注意)

 フラックスはまず置いていないので、部品取り外しや、半田付けを敏速に行うには
 必要不可欠なので、持参することをお勧めします。

自分も自腹で購入し、個人用として所有しています。
一つ持っておくと、普段の半田付けでも使えるので便利です。

もう一つ、あると便利なものとして、低融点ハンダがあります。
半田づけされた部品を外したい場合にとても便利です。

表面実装部品取り外しキット」とありますが、リード部品にも使えます。
(むしろ、リード部品の取り外しに使うことの方が多いです)

ピン数が多いSMD部品や、GNDパターンに挿入されたDIP部品はコテの熱が伝わりにくく、
半田が十分溶けないので部品を外しにくいです。
無理に取ろうとすると、基板のパターンまで剥がしてしまう事があります。

低融点ハンダは80℃程度で溶けるので、すぐに固まりません。
基板を傷めずに半田コテ1本で簡単に部品を外せます。
ハンダは鉛フリー、フラックスはハロゲンフリーなので製品に使用してもOKです。

・カメラ(スマホがあれば可)
 試験NGの結果、製品に対策してクリアした場合、
 その対策内容を写真に撮っておくと後で役立ちます。

・EMC対策部材
 電磁波シールド布、アルミホイル、EMIコアなど
 放射エミッションでは限度値以下にするのに、その場で色々な対策をすることになります。
 放射イミュニティでも誤動作した場合の対策検討に使用します。
 ※これらを使った対策については別記事で解説します。

 サイトにはメーカーより提供されたEMC対策用品が置いてあることが多いですが、
 必ずしも欲しいものがあるとは限らないので、準備した方が良いです。

 電磁波シールド布は、ノイズが出ているorノイズに弱い部分を遮蔽することで、
 原因調査に威力を発揮するので、お勧めです。

写真の製品は現在は販売されていませんが、他社で同様な製品が販売されています。

・部品サンプルブック(抵抗、コンデンサ等)
 対策で、基板上の抵抗やコンデンサを変える可能性がある場合に用意します。

・製品の資料
 製品の回路図、部品表など、改造や故障した場合に使用します。

・前回試験データ
 過去に測定データがある場合は、試験結果をその場で比較することができて便利です。
 特に、エミッション試験では波形データの比較をすることで、
 どの周波数帯域のノイズが大きいが分かり、対策を立てるのに役立ちます。

・スリッパ
 サイトによって、用意されているところもありますが、長時間の試験となると、
 靴だと結構疲れます。帯電防止のスリッパやサンダルを用意しておくと楽です。
 (※コロナ対策で持参が必要な場合もあるので注意)

・筆記用具
 意外と忘れがちで、無いと結構不便なので、忘れずに持参しましょう。 



【EMC試験の試験時間について】

EMC試験にかかる時間は製品の種類や仕様で変わりますが、おおよその目安を示します。
(※機器のセットアップや、試験結果NGによる対策や再試験の時間は除く)

<エミッション試験>
・放射エミッション試験
 スペクトラム測定(予備測定 水平・垂直偏波)15分
 QP値測定(1カ所あたり)         3~5分
  水平・垂直でQP値を各3点測定した場合
   合計 15分+5分x6点=45分

・雑音端子電圧試験 (単相ACの場合
 スペクトラム測定(予備測定 L・N相) 2分
 QP値測定(1カ所あたり)       1~2分
  L・N相でQP値を各3点測定した場合
   合計 2分+2分x6点=14分

※QP値など、エミッション試験の詳細については、以下を参照
 「EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識
 「雑音端子電圧とは? 伝導エミッションの基礎知識

<イミュニティ試験>
・放射イミュニティ試験
 滞留時間1秒、放射面4面の場合
 1偏波・1面あたりの測定時間は
  周波数  80MHz~1GHz  4分 (MHz帯用アンテナ使用)
       1GHz~6GHz  4分 (GHz帯用アンテナ使用)
             計 8分
 2偏波(水平・垂直)、4面(前後左右)で行うので、
   8分×2偏波×4面=64分

 製品の向きを変更する時間と、アンテナ交換の時間を各2分とすると、
 (アンテナ交換1回+製品の向き変更3回)×2分=8分
  合計 64分+8分=72分

 ※滞留時間など、放射イミュニティ試験の詳細については、
  「放射電磁界イミュニティ試験の方法と対策について」を参照

・静電気放電試験
 放電を行う印加ポイント1か所(10回x2(±極性)=20回分)につき約1分とした場合
  接触放電、気中放電 各5カ所
  間接放電 2カ所(水平・垂直結合板)とすると計12カ所になるので、
   1レベル 12分
   レベル1~4まで実施した場合、合計48分

  ※詳細は「接触・気中放電とは? 静電気放電(ESD)試験の方法と対策について」を参照

・サージイミュニティ試験
 AC単相電源ラインについて行う場合、
 位相角(0°,90°,180°,270°)、±極性で各5回を1分間隔で行うと
  4位相角×2極性×5回×1分=40分
 これをノーマル(L-N)、コモンモード(L-FG、N-FG)で行うと
  40分×3モード=120分
 1レベル試験するのに2時間かかります。

  ※詳細は「ノーマル・コモンモードとは? 雷サージ試験の方法と対策」を参照

・伝導イミュニティ試験
 電源ケーブルの試験の場合、
  滞留時間1sとした時、1測定あたり10~15分

・FTB(ファスト・トランジェント・バースト)試験
 電源ケーブルの試験の場合、
  ノイズ周波数(5k/100kHz)、±極性で各1分間ノイズ注入した場合
   レベル1~4まで試験すると
    2周波数×2極性×1分×4レベル=16分

 ※伝導イミュニティとFTBの詳細は「バースト、CDNとは? 伝導妨害とFTBについて」を参照

製品の種類にもよりますが、全試験を一発クリアは、なかなか難しいです。
特に、放射エミッション、放射イミュニティ、静電気放電、サージ試験は、
NGの場合、対策に苦労します。

以下の記事で、EMC対策で役立つ工具類を紹介しています。

試験NG時の対策については、以下のまとめサイトで解説しています。