この記事でわかること
・TL494の動作原理と使い方
・エラーアンプを使った検出回路
・各種電源回路への適用例
PWM制御ICであるTL494は、発売から40年以上が経過しているロングセラー品です。
このICは、TI(テキサス・インスツルメンツ)製ですが、
ONセミコンダクタなどのセカンドベンダーもあり、
安価(百円以下)であることから、入手しやすいです。
本記事では、TL494の使い方を説明すると共に
各種スイッチング電源への適用例について解説します。
<注意点>
本記事で解説するTL494の使い方は一般的な内容です。
各メーカーで仕様が異なっており、
ここで紹介する方法が適切で無い場合がある為、
使用の際は、デバイスのデータシートを必ず確認して下さい。
TL494の内部構成
TL494のピン配置と内部回路を示します。
本ICはPWM制御を行うスイッチング電源回路に必要な機能が組み込まれています。
PWM周波数を決める鋸波発振器、出力電圧や電流を検出するためのエラーアンプ、
PWM信号のON DUTYを制御するコンパレータ、PWM信号を出力するトランジスタ、
トランジスタの動作モードを設定するためのフリップフロップと論理回路、
検出回路の基準電圧等に用いる5V基準電源から構成されています。
このICの動作を簡潔に説明すると、
エラーアンプの出力であるFB信号と、デットタイムを設定するDTC信号を
コンパレータで鋸波と比較し、鋸波の方が高い時だけトランジスタをONします。
こうすることで、例えば、出力電圧をエラーアンプに入力することで、
高くなり過ぎたら、FB信号が上昇するので、
ON時間の割合(ON DUTY)が減り、出力電圧を下げます。
また、DTC信号により、FB信号と関係なく、
最大ON DUTYを制限することができるので、
プッシュプル動作時のトランジスタの同時ONを回避できます。
各ピンの機能
TL494のピンは大きく分けて3種類あります。
設定ピン:周波数設定(RT,CT)、基準電源(REF)
入力ピン:エラーアンプ入力(1IN±,2IN±)、フィードバック入力(FB)、
デットタイム制御入力(DTC)、出力制御入力(OC)
出力ピン:トランジスタ出力(C1,E1,C2,E2)
以下に各ピンの機能と使い方について説明します。
RT、CT(発振周波数設定)
鋸波の発振周波数は、 CT端子に接続されるコンデンサの充電時間で決まり、
その充電電流の大きさはRT端子に接続される抵抗値で決まります。
抵抗値Rtとコンデンサ容量Ctから、
発振周波数foscは以下の特性グラフから求めることができます。
概算値なら、以下の式で算出できます。
fosc[kHz] = 1/Rt[kΩ] × Ct[uF]
このfoscを基に、出力モードによって、
出力トランジスタのスイッチング周波数fswが決まります。
(出力モードについては、後で説明します)
fsw=fosc シングルエンドモード時
fsw=fosc/2 プッシュプルモード時
プッシュプルモードでのfswがfoscの1/2になる理由は、
Q1とQ2が交互にONして1スイッチング周期になるため、
鋸波2パルス分を必要とするからです。
発振周波数の推奨動作条件は1~300kHzですが、
動作音の発生を回避するため、
可聴周波数の上限である20kHz以上に設定します。
CT端子には以下の機能があります。
・PWM出力停止機能
CT端子をGNDに接続すると、コンデンサが充電されないため、
鋸波が出なくなり、PWM出力を停止させることができます。
・同期動作機能
RT端子をREF(5V電源)に接続することで、
内部発振器を使用せずに、外部クロック信号で動作させることができます。
この機能を利用して、複数のTL494の同期動作が可能です。
図の様に、スレーブ機を外部クロック入力モードに設定し、
マスター機のCT端子からクロック信号を入力することで、
スイッチング動作を一致させることができます。
REF(5V基準電源)
REF端子は精度±5%、最大出力10mAの5V電源出力となっており、
本ICの電源電圧Vcc=7V~40Vの範囲において、
電圧変動25mV以下の入力安定度を持っています。
この5V電源は、エラーアンプに入力する閾値電圧の生成以外にも、
以下の用途に使用されます。
・内部回路(ロジック回路、コンパレータ等)への電源供給
・複数ICの同期動作で、スレーブモードにする場合のRT端子への入力電圧
・トランジスタの出力モードをプッシュプルモードにする場合のOC端子への入力電圧
1IN±、2IN±(エラーアンプ入力)
エラーアンプの+入力に検出したい信号、-入力に検出基準となる閾値電圧を入力することで、
検出電圧>閾値電圧 ならば、エラーアンプ出力(つまり、FB電圧)が上昇し、
出力トランジスタのON時間の割合(以下、ON DUTYと称す)を減少させます。
入力できる電圧(同相入力電圧範囲)はー0.3V ~ Vccー2Vとなっており、
Vccによって、最大入力電圧が変わります。
エラーアンプ1、2の両出力はFB端子にダイオードを介してOR接続されており、
出力電圧が高い方の電圧がFB端子電圧になります。
ここで、エラーアンプが2個ある理由ですが、基本的な使い方として、
1個を出力電圧の制御に、もう片方を出力電流の過電流保護に使用します。
FB(フィードバック入力)
FB端子電圧が上昇するとON DUTYが減少します。
この端子はエラーアンプの出力と繋がっており、
ー端子(1INー、2INー)にRやCを経由して接続することで、
エラーアンプの応答性を調整できます。
(具体的な使い方については回路例で説明します)
また、エラーアンプを使用せず、
外部から直接FB端子に電圧を入力することも可能です。
その際は、エラーアンプの入力を以下の様に接続して無効化します。
DTC(デットタイム制御入力)
FBと同様、DTC端子電圧が上昇するとON DUTYが減少します。
DTC電圧を0Vから3Vに変化させることで、
ON DUTYが48%程度から0%に減少します。
(※プッシュプルモードの場合)
ここで、DTCが0Vでも50%にならないのは、
デットタイム・コンパレータへのDTC入力に0.1V加算して、
DTC電圧をゼロにならないようしているためです。(内部回路図参照)
50%になるのを避ける理由ですが、トランジスタの特性上、
ターンON時間tonより、ターンOFF時間toffの方が長いため、
ベース信号が同時Hでなくても、同時ON状態が発生します。
ターンON/OFF時間:
ベース信号がH/Lになってから実際にON/OFF状態になるまでの時間
プッシュプル回路の場合、トランジスタが同時ONすると、
短絡電流が流れて故障する恐れがあります。
このため、ON DUTYを50%未満にして、
ベース信号が2つともLの期間(デットタイム)を設けることで、
片方が完全にOFFしてから、もう一方をONさせるようにします。
※出力モードがプッシュプルモードの場合、
Q1とQ2が交互にONするため、最大ON DUTYは50%未満となります。
(データシートのグラフはプッシュプルモードの場合になります)
シングルエンドモードの場合は
Q1とQ2は同時ONなので、最大ON DUTYは2倍の100%に近い値となります。
・ソフトスタート機能
このDTC端子を使用してソフトスタート機能を設けることができます。
ソフトスタート機能は、電源回路の場合、
起動時に0Vである出力電圧を設定電圧まで緩やかに上昇させます。
これは、起動時の入力電流が過大(突入電流)になることや、
出力電圧が設定値を超えること(オーバーシュート)を防ぐ効果があります。
具体的には、起動から一定期間、ON DUTYの上限を制限し、
スイッチング動作で流れる電流を徐々に増加させるようにします。
このソフトスタート機能を持たせるため、DT端子を図のように接続します。
電源投入直後は、Csがショート状態となるので、DTC電圧=REF(5V)電圧となり、
ON DUTY 0%になることから、PWM信号は出力されません。
その後、R2を経由してCsが充電されていくと、
DTC電圧が低下し、3V以下になると、PWM信号が出力開始されます。
(鋸波のピーク電圧が3V程度のため)
最初のうちはON DUTYが小さいですが、DTC電圧低下と共に徐々に長くなり、
Csが充電完了するとソフトスタートは終了し、通常動作となります。
通常動作時のDTC電圧はR1とR2の分圧になるので、
DTC電圧=R2/(R1+R2) × 5V
となり、この電圧がソフトスタート終了後のON DUTYを決めています。
ソフトスタート期間はCsの充電時間に相当するので、
時定数R2 × Csが大きい程長くなります。
OC(出力制御入力)
出力トランジスタQ1、Q2の動作モードを設定します。
2出力あることで、プッシュプルやハーフブリッジ回路に使用できます。
OC (OUTPUT CTRL) 端子をGND接続すると、シングルエンドモード、
REF端子に接続すると、プッシュプルモードで動作します。
スイッチング周波数については、発振周波数の設定で説明した様に
プッシュプルモードでは1/2になります。
但し、Q1とQ2の出力をワイヤードOR(並列)接続すれば、
スイッチング周波数はシングルエンドモードと同じfoscとなります。
ワイヤードORしたプッシュプルモードと、
シングルエンドモードの違いは最大ON DUTYにあります。
シングルの場合は100%近くまで上げることができますが、
プッシュプルでは、その1/2になるので、
50%以下にする必要があるフォワードコンバータ等の利用に適しています。
フォワードコンバータについては下記記事で解説しています。
プッシュプルモードにおけるQ1、Q2の交互動作は、
内部回路にあるフリップ・フロップ(FF)の働きによるもので、
FFからの2出力は互いに反転した論理となります。
OC入力によって、FFの出力を有効/無効に切り替えています。
C1、E1、C2、E2(出力トランジスタ)
出力トランジスタQ1、Q2のコレクタ、エミッタ端子になります。
出力トランジスタのコレクタ出力電圧は最大40V、
コレクタ出力電流は最大250mA(推奨は200mA)なので、
シングルエンドモードでQ1とQ2を並列接続すれば最大500mAまで流せます。
エミッタ端子をGNDに接続すれば、通常のオープンコレクタとして使用でき、
トランジスタがOFFの時にH、ONでL出力されます。
また、コレクタ端子を電源に接続すれば、エミッタ・フォロワになり、
OFFでL、ONでH出力と論理が反転します。
回路例1:降圧型チョッパ回路
非絶縁型のDC/DCコンバータに使われる回路です。
仕様
・Vin = 10~40V
・Vout= 5V
・Iout = 1A
・スイッチング周波数fosc = 20kHz
<注意>
抵抗値等の回路定数については、各メーカーのデーターシート等から引用したものであり、
動作を保証するものでは無いため、参考程度として下さい。
回路動作について概略図を使って説明します。
Qオン時、入力電源VinからコイルLを経由して、出力電流Ioutが流れます。
Q1がオフすると、Vinから電流は流れなくなりますが、
コイルは電流の変化を妨げる働きをするため、
Dを経由してLは電流を流し続けます。
このように入力からの電源が遮断されても、
コイルの働きによって、電流を出力し続けるため、
コイルにエネルギーが蓄えられていたと考えることができます。
このエネルギーはQオン時に電源から流れる電流によって充電されます。
この時、コイルLに発生する電圧VLは、
コイルの公式 VL=L × di/dt を用いて、次の様になります。
・ON時
VLは入力電圧Vinと出力電圧Voutの差になるので、
VinーVout=L × di/dt
※厳密にはQの飽和電圧Vce(sat)があるので、
VL=VinーVoutーVce(sat)となりますが、小さいので、ここでは無視します。
・OFF時
Vinは供給されなくなるので、ON時の式からVinを除くと、
ーVout=L × di/dt
※厳密にはダイオードの順方向電圧VFがあるので、
VL=ーVoutーVFとなりますが、小さいので、ここでは無視します。
ON、OFF時のコイル電流ILの変化(傾き)はdi/dtになるので、
上記の式を変形して、
di/dt=(VinーVout)/L ・・・ON時
ーVout/L ・・・OFF時
ILを波形で表すと下図のようになります。
コイル電流の最大値をIL(MAX)、最小値をIL(MIN)とすると、
その平均値が出力電流Ioutとなります。
Iout=(IL(MAX)+IL(MIN))/2
コイル電流の変動⊿I(=IL(MAX)ーIL(MIN)) は、
出力コンデンサCoutで吸収することで、負荷RLに流れる電流Ioutを一定にします。
⊿Iを吸収するためにCoutに流入する電流をリップル電流と呼び、
容量が大きい程、許容リップル電流は大きくなります。
コイル電流の変動⊿Iが小さければ、コンデンサ容量を小さくできますが、
そのためには、コイル電流の傾きを緩やかにするため、Lを大きくすると、
今度はコイルのサイズが大きくなってしまいます。
また、スイッチング周波数を高くしても、
⊿Iを小さくできますが、スイッチング損失やノイズが増大します。
このような理由から、一般的には、
⊿Iの大きさがIoutの20~50%程度になるようにLを選定します。
入力電圧Vinと出力電圧Voutの関係は、次式で表すことができます。
Vout=Vin × ton/(ton+toff)
この式になる理由ですが、式を変形すると、
Vin × ton=Vout × (ton+toff)
となります。
Vin×tonは回路への入力エネルギーで、
Vout×(ton+toff)は回路からの出力エネルギーとなり、
損失を無視すれば、2つは等しくなることを意味します。
先程の式でton/(ton+toff)はON DUTYになるので、
VinとVoutが決まれば、ON DUTYも決まります。
<Lを決める>
本例では、⊿IがIoutの20%になるようにLを選定します。
⊿I=Iout × 20%=0.2A
ON DUTYは先程の式より、
ON DUTY = Vout/Vin = 5V/(10~40V) = 12.5~50%
ton = ON DUTY /fosc= (12.5~50%)/20kHz=6.25~25μs
よって、Lを計算すると、
Vin=10Vの時は
L = (Vin ーVout) × ton/ΔI
= (10V ー 5V) × 25[μs]/0.2[A]
= 625μH
Vin=40Vの時は
L = (Vin ーVout) × ton/ΔI
= (40V ー 5V) × 6.25[μs]/0.2[A]
= 1093uH≒1mH
以上から、⊿Iを0.2A以内にするため、
インダクタンスを1mHに設定します。
出力コンデンサCoutについては、
許容リップル電流が⊿I(=0.2A)よりも十分大きなものを選びます。
<エラーアンプ回路部分>
エラーアンプ1で定電圧制御、エラーアンプ2で過電流保護を行っています。
①エラーアンプ1回路
+入力は出力電圧VoutをR14+VR2と、R15で分圧した電圧VDETが入力され、
ー入力には5V基準電源(REF)をR1、R2で分圧した電圧(2.5V)が入力されます。
+入力>ー入力で、エラーアンプはH出力され、ON DUTY減少でVout低下し、
+入力<ー入力で、エラーアンプは出力されず、ON DUTY増加でVout上昇することで、
±入力が同じになるように動作します。
従って、VR2を調整することで、
Vout=2.5V ×((R14+VR2+R15)/R15)
=2.5V ×((5.1k + (0~2k) + 5.1k)/5.1k)
=5~5.98V
の範囲でVoutを変化させることができます。
ここで、エラーアンプの出力と繋がっているFBピンと
ー端子(1INー)間に接続されているR3、R4、C2によって、
エラーアンプ出力の応答性(ゲイン)を調整しています。
この仕組みは、差動増幅回路の公式から理解することができます。
差動増幅回路の公式より
Vout=Rb/Ra × (Vin+ ー Vin-)
この公式になる理由を下記記事で解説してます。
エラーアンプは、差動増幅回路において、
Ra=0、Rb=∞ にしたものになり、
ゲインが非常に大きくなります。
Vout=∞ × (Vin+ ー Vin-)
つまり、ちょっとの入力差で、Voutが最大値まで出力されることを意味します。
このまま電圧制御に使用すると、出力電圧の僅かな変動で、
ON DUTYが最大値や最小値になり、応答性が早すぎて出力電圧が不安定になります。
これを防ぐため、ゲインを下げる必要があります。
まずは、R4を接続することで、先程の差動増幅回路のRbが∞から有限値になることで、
ゲインR2/R1も∞から低下します。
このR4の抵抗値が小さい程、ゲインが小さくなります。
次にR4と並列に接続されているC2とR3は、
高周波信号時のゲインを更に低下させる働きをします。
信号が直流の場合、C2によって遮断されるので、
R3が接続されていないのと同じ状態です。(R4のみゲインに影響する)
交流になるとC2を通過するので、R3とR4の並列接続となり、
合成抵抗値が小さくなることで、ゲインが更に低下します。
このC2の通過しやすさは、インピーダンス 1/(2 π f c) で表現できます。
(ここではインピーダンス=抵抗値のイメージでOKです)
高周波ほど、インピーダンスが小(つまり、Cの抵抗値が小さく、通過しやすい)になるので、
ノイズなどの高周波信号を検出しても、ゲインが小さくなることで、
エラーアンプが過敏に反応しないようにして制御を安定化させることができます。
Cの容量が大きい程、低い周波数でもインピーダンス1/(2 π f c) が小さくなるので、
ゲインが小さく(応答性を下げる)なります。
アンプのフィードバックにRやCをつけることの効果については、
下記記事で詳しく解説しています。
②エラーアンプ2回路
+入力はGNDに接続され、
ー入力は、出力電流IoutがR13に流れることで発生する電圧VIDETを
R8を介して入力されます。
ここでは、このVIDETが負電圧になります。
+入力がGNDなので、このー入力がGNDより低いと
エラーアンプはHに出力され、ON DUTYを小さくします。
このー入力がGNDレベルになる条件は、
R7に流れる電流=R8に流れる電流 になるので、
REF(5V)/R7=VIDET/R8
変形して、
VIDET=R8/R7×5V
となります。
この回路例ではR8=300、R7=5.6kなので、
VIDET=300/5.6k×5V=0.267V
R13=0.1なので、
Iout=VIDET/0.1
=0.267V/0.1=2.67A
出力電流が2.67A以上なら、エラーアンプがH出力されます。
ここで、ー入力とFB端子間は何も接続されていないので、
ゲインが∞となるため、ON DUTYはすぐに0%となり、
出力が即停止することで過電流保護を行います。
この回路例ではー側に電流検出抵抗R13があるため、
入力電源のGNDと、本回路の出力GNDは一致しないことから、
出力先の負荷装置には入力電源は接続できません。
入力と出力GNDを一致させるには、電流検出抵抗を+側に設ける必要がありますが、
検出抵抗両端の電位差を検出するため、回路が複雑になります。
<発振周波数>
RT、CT端子に接続されたR10、C5で設定します。
fosc=1/(CT×RT)=1/(0.001u×47k)
=21.2kHz≒20kHz
OC端子をGND接続することで、シングルエンドモードで動作するので、
発振周波数=Q1,Q2のスイッチング周波数
になります。
<DTC部分>
VR1とR9により、DTC電圧を設定します。
VDTC=REF×VR1/(VR1+R9)
=5×(0~2k)/((0~2k)+7.5k)
=0~1.05V
DTCとON DUTYのグラフ(前掲)より、
最大ON DUTYを60%以下に制限させることができます。
(グラフからON DUTYは30%になりますが、
これはプッシュプルモード時の値であり、シングルエンドモード時は2倍します)
また、C4によってソフトスタート動作を行うことができ、
その期間はC4とVR1の時定数にほぼ相当します。
C4×VR1=10u×2k=20ms (VR1=2kΩ時)
<トランジスタ ドライブ回路>
動作させるパワートランジスタTR1は
ONセミコンダクタ製TIP32Aです。
(定格:Ic=3A、VCE=60V)
PNP型なので、ベースから電流が流れだすとONします。
下図は、TL494のQ1,Q2がONすることで、
TR1がONした時の状態です。
ここではベース電流IBが最も小さい場合となるVin=10V時で、
TR1のコレクタ電流Icが1A以上流せるようにします。
IBを決めるのはR11ですが、ベース・エミッタ間抵抗R12や、
Q1、Q2がONした時の電圧となるコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)も影響します。
R12をつけることで、ノイズ等でTR1がONしてしまうのを防ぎます。
Vinから電流が流入しても19mAまではR12の方に流れることで、
ベースからは電流が流れないため、ONしません。
ベース・エミッタ間抵抗の決め方については下記記事で解説しています。
R11に印加される電圧は
Vinー(TR1のVBE(sat)+Q1,Q2のVCE(sat))
=10ー(0.9+1.3)=7.8V
となるため、
Ia=7.8V/150=52mA
となり、
ベース電流はIBE分を差し引いたものになります。
IB=IaーIBE=52ー19=33mA
TIP32Aの電流増幅率hFEは70(Ic=1A時)なので、
流すことができるコレクタ電流Icは、
Ic=hFE×IB=70×33mA≒2.3A
となり、出力電流Ioutである1Aを流すのに十分です。
Vin=40V時にQ1,Q2に流れる電流は
R11に印加される電圧が
40ー(0.9+1.3)=37.8V
なので、
Ia=37.8V/150=252mA
となりますが、
シングルエンドモードで並列接続しているため、
許容電流はQ1、Q2併せて500mAまで流せるのでOKです。
ダイオードD1は
新電元工業製ファスト・リカバリーダイオード(FRD)
S3L20U (定格:200V 3A)を使用しています。
FRDは逆回復時間が短いため、
逆電圧印加直後の逆電流を抑えることができるので、
高速スイッチング回路に向いています。
ダイオードの選定については下記記事で解説しています。
回路例2:プッシュプル・コンバータ
チョッパ回路に比べ、出力電力を大きくでき、
昇圧も可能なDC/DCコンバータです。
本例では、一次側と二次側のGNDを共通にしているため、
トランスを使用していますが、非絶縁型になります。
絶縁型にしたい場合は、TL494を二次側に配置し、
TR1、TR2へのベース信号をパルストランス等を介して絶縁入力させ、
TL494への電源供給回路を別途設ける必要があります。
OC端子をREF(5V)に接続しており、
プッシュプルモードで動作することで、
TR1とTR2が交互にONします。
前述した通り、同時ONによる短絡電流故障を回避するため、
このICでは、ON DUTYを50%以下に抑えており、
両方OFFの期間を確保することで、
ターンOFFが多少遅れても同時ONしないようにしています。
トランジスタ出力(C1,C2,E1,E2)については、
エミッタフォロワにすることで、
トランジスタ出力ONで、TR1、TR2にベース電流が流れるようにしています。
また、エラーアンプ2による過電流検出については、
2INー端子とFB間にR5、R6、C3を設け、
エラーアンプ1と同様に、応答性を調整可能にしています。
★トランジスタやFETの設計方法についてのまとめ記事です。
★半田付けのコツや部品の外し方を解説しています。
★基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています。