この記事でわかること
・3.3V⇔5V論理レベル変換方法がわかる
・3.3Vマイコンから5V系機器への入出力回路がわかる
・動作電圧が5Vを超えるリレー等に出力する方法がわかる
マイコン搭載基板を設計する際、
基板に接続する外部機器は5V以上で動作するものが多く、
3.3V系マイコンの場合、入出力電圧の変換が必要です。
本記事では、電圧の異なる信号を変換する為に、
どのようなICを使用すれば良いか解説します。
5V機器→3.3Vマイコンへの入力
5V系外部機器からの入力の場合、
トレラント機能を持つロジックICを使用します。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2023/01/3bad8d240edd814f6ec740761f34cf78-1024x478.png)
トレラント機能を持つICは3.3V電源で動作しますが、
5V入力に対応できます。
SN74LV244A 8回路入りバッファIC(TI製)
LVシリーズはトレラント機能を持つ3.3V系ロジックICです。
価格も安く、高速なので、よく使われます。
電源電圧Vcc=3.3V、5Vどちらでも動作します。
入力電圧はVccに関係なく7Vまで耐えられます。
入力の論理レベルは電源電圧Vccで決定されます。
Hレベル入力電圧 VIH=0.7 × Vcc
Lレベル入力電圧 VIL=0.3 × Vcc
Vcc=3.3Vの場合、VIH=2.31V、VIL=0.99Vとなります。
5V機器の出力レベルについては、内部のデバイスで多少の違いはありますが、
TC74HCシリーズ 出力電流4mAの場合は以下になります。
最小Hレベル出力電圧 VOH(min)=4.13V
最大Lレベル出力電圧 VOL(max)=0.33V
VOH(4.13V) > VIH(2.31V)、VOL(0.33V) < VIL(0.99V) なので、
5V機器からの論理信号を正しく認識できます。
上記の回路図では外部機器が未接続でも
入力が不安定にならないように4.7kΩでプルアップしています。
このプルアップ抵抗は10kΩでも構いません。
抵抗値が大きい方が消費電力は減りますが、
あまり大きくするとノイズに弱くなります。
理由は抵抗が大きいと、
ノイズが抵抗に流れた時の電圧降下が大きくなり、
Hレベルを維持できなくなる為です。
また、外部からのノイズ除去の為、
100Ωと0.01uFでローパスフィルタを構成しています。
これにより、160kHz以上のノイズをカットしています。
このRCの値については、信号速度に応じて、
カットオフ周波数fcを設定することで決まります。
出力については、3.3V系ロジックICそのものなので、
3.3V系マイコンをそのまま接続できます。
つまり、このLVシリーズは、Vcc=3.3Vにすることで、
入力は5V、出力は3.3Vにすることができます。
3.3Vマイコン→5V機器への入力
マイコンからの3.3V出力を5Vに変換して外部機器に出力する場合は、
5V電源で動作し、3.3V入力に対応できる
TTLレベル入力機能を持つロジックICを使用します。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2023/01/613c4092d31a8af235e41d03c333aa8d-1024x467.png)
TTLレベル入力ならば、5V系ロジックICでも、
3.3Vの論理レベル入力に対応できます。
TC74HCT244A 8回路入りバッファIC(東芝製)
HCTシリーズは5V系ロジックICで、
シリーズ名の末尾にTが入ると入力がTTLレベルになります。
(VHCT、LVTなど)
通常のCMOSレベルの場合、
入力の論理レベルは電源電圧Vccで決定されます。
Hレベル入力電圧 VIH=0.7×Vcc
Lレベル入力電圧 VIL=0.3×Vcc
Vcc=5Vの場合、VIH=3.5V、VIL=1.5Vとなります。
これだとHに認識させるためには3.5V以上必要なので、
3.3V系ICの出力では対応できません。
しかし、TTLレベル入力だと、Vccに関係なく以下になります。
Hレベル入力電圧 VIH=2.0V
Lレベル入力電圧 VIL=0.8V
2VあればHと認識できるので、3.3V系ICの出力で対応できます。
3.3V系マイコンの出力電圧は、
デバイスにもよりますが、以下の値になります。
最小Hレベル出力電圧 VOH(min)=2.4V
最大Lレベル出力電圧 VOL(max)=0.4V
VOH(2.4V) > VIH(2V)、VOL(0.4V) < VIL(0.8V)なので、
マイコンからの3.3V系H/L信号を正しく認識できます。
出力についてはCOMSレベルで動作し、
5V論理レベル信号になるので、5V系機器と接続できます。
3.3Vマイコン⇔5V回路 入出力
パラレルバス等の双方向信号の場合については、
電圧変換ICを使います。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2021/09/8759da01d2af8f965540c25595a979a0-1024x568.png)
SN74LVC4245A 8回路入り 5V-3.3V レベルシフタ(TI製)
LVCシリーズは先程の3.3V系ロジックIC LVシリーズの高速版です。
このICは3.3V、5V両電源を使用します。
DIR入力により、入力/出力が切り替えられます。
これはA信号側が5V系、B信号側が3.3V系ロジックICとして動作します。
また、OE入力により、信号回線から遮断(ハイ・インピーダンス)できる
3ステート出力が可能です。
3.3Vマイコン→ 24V電圧信号を出力する場合
モーターやリレーなど5Vを超え、電流も10mA以上流したい場合は
通常のロジックICでは対応できないため、トランジスタアレイを使用します。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2021/09/337ec5200beea4c8f291ea28e7deea85-1024x595.png)
TBD62083A 8回路入り トランジスタアレイ(東芝製)
これはトランジスタアレイとして有名だったTD62083Aの後継品です。
当時はオープンコレクタ出力でしたが、
今はFETになり、オープンドレイン出力ですが、動作は同じです。
入力Hで内部FETがオンすると、出力がLになるので、論理が反転します。
(論理信号を反転したくない場合は非反転型のTBD62783Aがあります)
このICは出力電圧50V、出力電流0.5Aまで流す事ができます。
(但し、温度、ON期間、複数同時ON等の条件で許容電流は減少します)
注意点として、このICはオープンドレイン出力なので、自ら電圧を出力できません。
出力がスイッチになっていると考えた方が適切です。
これはオープンコレクタと同じ考え方です。
オープンコレクタについては下記記事で解説しています。
ちなみに、このICに電源ピンVccはありません。
内部はFETなので、入力信号を加えれば動作します。
このFETの出力耐圧は最大50Vなので、
外部から電圧を加えることで、15Vにも24V出力にもできます。
マイコンからのH信号でFETがオンして、
コイルに電流が流れてリレーが動作します。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2021/09/b1dc03d98fd4c37e275847d8e331b96b.png)
L信号でFETがオフしますが、この時、リレーコイルの逆起電力による
電圧上昇でFETの定格電圧を超える恐れがあります。
![](https://ana-dig.com/wp-content/uploads/2021/09/d6611a24d6aa3d2739bb2f8ec663227f.png)
その場合は、COM端子にリレー電源24Vを接続します。
これにより、トランジスタアレイ内のクランプダイオードにより、
24Vを超えたら24V電源に電流が流れるので、
FET出力(O1)の電圧上昇を防ぐことができます。
但し、オフしてもすぐに電流が遮断できなくなるので、
COM未接続時より、リレー停止が少し遅れます。
このため、逆起電力発生の恐れが無いLEDを接続する場合は、
COMは未接続で使用した方がLEDをすぐ消灯できます。
<以下の記事で、基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています>