この記事でわかること
・インピーダンスについて、回路設計を行う上での考え方
・高入力インピーダンスや低出力インピーダンスが良い理由
・ボルテージフォロワを使ったインピーダンス変換による入出力特性の改善
インピーダンスと聞くと、抵抗に比べ扱いずらい印象があります。
また、装置などの説明で「入力インピーダンスが高い」等の記載を見かけますが、
それによる利点は述べられていない事が多いです。
本記事では、インピーダンスの考え方と、入力&出力インピーダンスについて説明し、
それらが高いor低い場合、回路や装置にどのような影響を与えるのか、
その悪影響を無くすのに用いられるボルテージフォロワを使った回路例を紹介します。
<注意点>
本記事はインピーダンスの基礎知識を説明することが目的であり、
解説する製品の機能や回路の動作を保証するものではありません。
ここで紹介する回路が適切で無い場合がある為、
使用の際は、デバイスのデータシートを必ず確認の上、
回路への利用については自己責任でお願いします。
インピーダンスとは何なのか?
インピーダンスというと、難しく感じるかもしれませんが、
ここでは単に抵抗と考えてもらって構いません。単位も抵抗と同じΩです。
では、抵抗との違いは何かというと、交流回路の場合、
コイルやコンデンサにおいて、周波数に応じて電流の流れやすさに影響を与える
リアクタンスと呼ばれる要素がインピーダンスには含まれていることです。
インピーダンスZ[Ω]=抵抗R[Ω]+リアクタンスX[Ω]
リアクタンスXにはコイルによる誘導性リアクタンスと
コンデンサによる容量性リアクタンスがあります。
誘導性リアクタンスXL=2πfL
容量性リアクタンスXC=1/(2πfC)
f:交流の周波数[Hz]
L:コイルのインダクタンス[H]
C:コンデンサの静電容量[F]
XLは周波数がゼロ(直流)だとゼロになるので、インピーダンスはRだけで小さくなり、
周波数が高くなるとXLは大きくなるので、インピーダンスも大きくなります。

これはコイルに直流を流しても抵抗はゼロですが、交流で周波数が高い程
電流を流しにくくする働き(※)をすることと一致します。
※厳密には電流の変化を妨げる働きであり、電流が流れている場合は
電源からの供給が無くなっても電流を流し続けようとする動きをします。
スイッチング電源回路は、この働きを利用するため、必ずコイルやトランスがあります。
スイッチング電源については下記記事で解説しています。
XCは周波数がゼロ(直流)だと無限大となるので、インピーダンスも無限大ですが、
周波数が高くなると小さくなるので、インピーダンスも小さくなります。

これはコンデンサに直流信号を加えても電流は流れませんが、
高周波信号になるとコンデンサがショート状態になって電流を流すことと一致します。
電子部品や装置には抵抗成分だけでなく、リアクタンス成分が含まれるため(※)、
流れる信号の周波数によってインピーダンスは変わってきます。
※抵抗器単体でも、純粋なR成分だけでなく、リアクタンス成分が存在します。
入力インピーダンスが大きい方がよい理由
以降の説明では、電子部品や装置のことを総称して本回路と記することにします。
入力インピーダンスは、本回路の入力に接続した前段回路から見た時のインピーダンスで、
小さすぎると前段回路からの入力電圧を本回路が正常に入力できなくなります。

例えば、本回路に定電圧を入力するため、抵抗分圧回路を接続した場合を考えます。
本回路の入力インピーダンスが大きければ、前段および本回路の合成抵抗を考えた場合、
下段側の抵抗値への影響は小さく、前段回路単体時と殆ど同じ抵抗比となるので、
電圧が低下せずに本回路に入力できます。
しかし、入力インピーダンスが小さいと下段側の抵抗値の減少が大きくなるため、
抵抗比が変化して、入力電圧は低下してしまいます。
この現象を電流で説明すると、入力インピーダンスが小さいと、
本回路への入力電流が大きくなるので、上段側抵抗R1に流れる電流も増えるため、
R1での電圧降下による入力電圧の低下を引き起こします。
従って、高入力インピーダンスなら、入力電流が小さいので、
出力電流の小さいマイコンやセンサー等の出力からでも、
電圧が低下することなく信号を本回路に入力できます。
但し、高入力インピーダンスにはノイズに弱いという欠点もあります。
これは、インピーダンスが高いと、ノイズによる僅かな微小電流が流れても、
V=R×Iにより、大きなノイズ電圧が発生してしまうためです。
出力インピーダンスが小さい方がよい理由
出力インピーダンスは、本回路の出力に接続した後段回路から見た時のインピーダンスで、
大きすぎると後段回路への出力電圧を本回路が正常に出力できなくなります。

例えば、本回路から負荷に定電圧を出力する場合を考えます。
本回路の出力インピーダンスが小さければ、負荷への出力電圧は正常ですが、
大きいと負荷電流による電圧降下が大きくなり、出力電圧が低下してしまいます。
別の表現で言うと、接続する後段回路の入力インピーダンスが小さく、
かつ、本回路の出力インピーダンスが大きいと、
後段回路に出力する電圧が大きく低下してしまいます。
従って、出力インピーダンスが小さいということは、
大きな出力電流を後段回路に供給できることを意味します。
高入力インピーダンス&低出力インピーダンスの回路
以上の説明により、一般的には本回路の入出力特性が、
高入力インピーダンスで、かつ低出力インピーダンスであることが求められます。
ここでは、その様な入出力特性を持つ回路を紹介します。
<オペアンプ>
理想的なオペアンプは入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスがゼロです。

上図は単電源オペアンプの定番品であるLM358の内部回路図です。
これを見ると、±入力ともにコレクタ接地(エミッタフォロワ(※))された
PNPトランジスタ(Q1、Q4)のベースに接続されています。
※エミッタ電圧が入力(ベース)電圧に追従(フォロー)して、
入力電圧と殆ど同じ電圧を出力することから、その様に呼ばれます。
動作の仕組みについては後述します。
PNPのベースからコレクタ間はダイオードを逆方向接続した状態と同じなので、
ベースに入力電流は殆ど流れ込みません。(※)
※LM358の入力バイアス電流は250nA
また、ベースから流れ出る電流についても、上位電圧であるエミッタから
ベース間の電位差はダイオードの順方向電圧となる0.6V程度と小さいため、
エミッタ経由でベースから流れ出す電流はわずか(※)です。
※I=V/Rより、2点間の電位差Vが小さければ、2点間を流れる電流Iも小さい
このようにオペアンプの入力に流れ込む&流れ出す電流は小さいことから、
入力インピーダンスは数MΩ程度と非常に高いです。
出力回路については、NPN(Q6)とPNP(Q13)を組合せたプッシュプル出力になっています。
この出力はH出力時は上段のNPNがオンして出力端子がVccに直結し、
L出力時は下段のPNPがオンして出力端子がGNDに直結するため、
どちらの場合でも、途中に抵抗が存在しないので出力インピーダンスがゼロとなります。
実際には上下段同時ONになった場合の貫通電流抑制のための抵抗Rscを設けたり、
トランジスタのコレクタ・エミッタ間飽和電圧VCE(sat)による電圧降下による影響で、
出力インピーダンスは存在しますが、数十Ω~数kΩ程度と小さいです。
プッシュプル出力については下記記事で解説しています。
このオペアンプを使ったバッファ回路であるボルテージフォロワを使うことで、
本回路が低入力や高出力インピーダンスでも入出力特性を改善できます。
ボルテージフォロワは後で説明します。
<コレクタ接地(エミッタフォロワ)回路>
先程のオペアンプの内部回路ではPNPトランジスタのコレクタ接地回路でしたが、
NPNトランジスタのコレクタ接地回路でも高入力インピーダンスになります。

NPNの場合、コレクタ接地と言ってもGNDではなく、Vccに接続していますが、
ここで言う接地とは電圧変化の無い基準電圧を意味し、コレクタ電圧は常にVcc一定です。
ベースからエミッタ間はダイオードの順方向接続に相当するので、入力電流は流れますが、
ベース・エミッタ間の電位差は順方向電圧(VBE(sat))の0.6V程度と小さいため、
入力電流は小さいです。
ベース電圧VB(Vin)が上昇した場合でも、トランジスタはVBE(sat)を維持するため
エミッタ電圧VE(Vout)も同じだけ高くなる(※)ので、ベース(入力)電流IBは増えません。
※VB上昇→VBE増加→IB増加→IC(IE)増加→IE×R=VEによりVE上昇→VBE縮小→IB減少
次に出力ですが、NPNの場合、負荷電流の増加によりエミッタ(出力)電圧が低下すると、
ベース・エミッタ間の電位差が広がることで、ベース電流が多く流れます。
ベース電流が増えれば、増幅作用によってコレクタ電流も増え、
負荷に供給される電流が増加することで、エミッタ電圧の低下を防ぐように働きます。
従って、負荷電流が増加しても出力電圧の低下は小さいことから、
出力インピーダンスが低いことになります。
ボルテージフォロワによるインピーダンス変換
オペアンプによる非反転増幅回路の増幅率を1にしたものをボルテージフォロワと呼びます。
これは入力電圧をそのまま出力するだけの回路ですが、前述したオペアンプの
高入力&低出力インピーダンス特性を活かすことができます。

本回路が低入力インピーダンスでも、前段にボルテージフォロワを設けることで、
高入力インピーダンスに変換することができ、
本回路が高出力インピーダンスでも、後段にボルテージフォロワを接続すれば、
低出力インピーダンスに変換できます。
非反転増幅回路やボルテージフォロワの詳細は下記記事で解説しています。
但し、ゲインがある程度大きくないと動作が不安定(発振)となるオペアンプもあるので、
ボルテージフォロワにする場合はオペアンプの選定に注意が必要です。
データシートに「6dB(2倍)以上の利得(ゲイン)での使用を推奨」等と記載されている
オペアンプ(※)はボルテージフォロワに使用できません。
※高精度・高速オペアンプに多い
次に、ボルテージフォロワを使ったインピーダンス変換の回路例を紹介します。
例1:ICへの定電圧入力
ICに定電圧を入力する場合の例として、タイマーICで有名なNE555において、
タイマー時間を調整するためにCONT端子に外部から電圧を入力する場合、
抵抗分圧したものを直接接続すると、555の内部抵抗とで分圧されるため、
CONTへの入力電圧が低下してしまいます。
(つまり、CONT端子の入力インピーダンスが高くない)

そのため、CONT端子の前にボルテージフォロワを接続し、
入力インピーダンスを十分大きくすることで、入力電圧の低下を防止します。
タイマーIC 555の詳細は下記記事で解説しています。
例2:マイコン出力のパワーアップ
マイコン内蔵のDAコンバータの出力インピーダンスは高く、電流を多く流せない(※)ため、
ボルテージフォロワで出力インピーダンスを下げることで、出力電流をUPできます。
※一般的なマイコンのアナログ出力は数mA程度

上図はコンパレータを使ったソレノイド電流制御回路で、
Vinにマイコンからのアナログ出力(0~3.3V)をボルテージフォロワを介して、
コンパレータに入力することで、ソレノイドに流れる電流を0~1Aの範囲で制御します。
この回路の詳細は下記記事で解説しています。
例3:高精度アンプの発熱を低減して高精度を維持する

高精度アンプで大きな出力電流が必要な場合、後段にボルテージフォロワを接続して、
高精度アンプの出力電流を減らすことで、高精度アンプの自己発熱を低減し、
温度変化による出力への影響を抑えて高精度を維持します。
各種オペアンプについては下記記事で解説しています。






