この記事でわかること
・リレーの種類と特徴(フォトモスリレーとSSRの違い等)
・リレーの使い方(接点保護回路、負荷との接続法)
・リレー駆動回路の設計方法(コイルの逆起電圧対策)
リレーには、コイルに電圧を印加することで接点が動作する有接点リレーと、
LEDに電流を流し発光させることでFET等の半導体が動作する無接点リレーがあります。
本記事では、各種リレーの特徴と駆動回路の設計方法を説明すると共に、
コイルによる逆起電圧を防止する方法や、接点溶着を防ぐ回路についても解説します。
リレーの種類
リレーは大別して、機械的な接点を持つ有接点リレーと、接点を持たない無接点リレーがあり、
この2つのリレーは以下のような違いがあります。
有接点リレー
メカニカルリレーとも呼ばれ、コイルに電圧を印加して電流が流れることで
磁力を発生させて接点を開閉させます。
コイルに電圧を印加する方向(+とー)が決まっているものを有極リレー、
そうでないものを無極リレーと呼びます。
・有極リレー
リレーの磁気回路の一部に永久磁石を使用しており、
コイルに電圧を加えない時、バネと永久磁石の力で接点を元の状態に復帰します。
接点を動作させるには、永久磁石の力とは逆向きに作用させる必要があるため、
コイルに印加する電圧の方向が決まっています。(極性を逆にした場合は動作しません)
・無極リレー
永久磁石を使用していないため、コイルに印加する電圧の方向はどちらでも良いです。
但し、ばねの力のみで復帰状態を維持するため、有極リレーに比べ、振動や衝撃に弱いです。
動作の種類
・シングルステイブル型
電圧が印加されている時だけ接点が動作します。
・ラッチング型
電流を止めても接点状態をそのまま保持するリレーで、
接点を戻す(復帰)方法によって2種類あります。
1巻線ラッチング型:逆電圧(逆方向電流)で解除
2巻線ラッチング型:セット用とリセット用の2個のコイルで構成され、
リセットコイルへの電圧印加で解除(両コイルの同時印加は不可)
このようにラッチング型は電圧の印加する方向が決まっていることから、
有極リレーのみにあるタイプです。
接点の種類
動作時に接点が閉じる(ON)か、開く(OFF)するかによって、以下の種類があります。
・a接点
動作時に閉じるNO(ノーマル・オープン)接点で、メーク接点とも呼ばれます。
・b接点
動作時に開くNC(ノーマル・クローズ)接点で、ブレーク接点とも呼ばれます。
・c接点(トランスファ接点)
接点が2つあり、片方が開いてから、他方が閉じるタイプで、
BBM(ブレーク・ビフォワ・メーク)接点とも呼ばれます。
・MBB(メーク・ビフォワ・ブレーク)接点
接点が2つあり、片方が開く前に他方が閉じるタイプで、コンテニュアス接点とも呼ばれます。
ICへの入力切替など、2接点共にオープン(ハイ・インピーダンス)状態を避ける場合に使用します。
接点の形状、材質についても以下の種類があります。
接点の形状
・シングル接点 :可動接点と固定接点の接触箇所が1カ所
・ツイン接点 :可動接点と固定接点の接触箇所が2カ所
・クロスバーツイン接点 :可動接点と固定設定をクロス状に配置
小さい接触面積で加重を上げ、高い接触信頼性を持ちます。
接触抵抗を小さくできますが、許容電流は小さくなります。
接点の材質
Ag(銀):導電率が高く、接触抵抗を小さくできますが、硫化皮膜が生成しやすいです。
開閉の際に発生するアーク放電により酸化膜を除去しますが、
アークが発生しない微小負荷の場合は除去できないため、表面処理が必要となります。
AgSnO2(銀酸化スズ):転移現象(※)に強く、接点溶着が起きにくいですが、
Agと同じく硫化皮膜が生成しやすいです。
※転移現象:片方の接点が溶融あるいは蒸発して他方の接点に転移すること。
接点表面に生じた凹凸によって、接点同士がロックされた状態になる恐れがある。
AgPd(銀パラジウム):硫化被膜がAgより生成しにくいですが、有機ガスの吸着でポリマを
生成しやすいため、Au(金)などの表面処理で防止します。
AgNi(銀ニッケル):Agと同様に高い導電率を持ちながら、硫化被膜が生成しにくいです。
接点の表面処理
接点の表面にAu(金)を使用する理由は、腐食に強いためです。
アーク放電による接点の酸化膜除去ができない微小電流負荷の場合に効果を発揮します。
但し、導電率が銀より低いので、大電流負荷には不向きです。
Auクラッド(金貼り):接点表面にAuの板材を貼り合わせているため、厚みがあります。
また、厚さが均一で、ピン・ホール(※)が生じません。
※表面処理の過程で生じる小さな穴のこと。
Auメッキ(金メッキ):接点表面にAuの膜を張ったもので、厚さはクラッドより薄いです。
低コストで一般的によく利用されますが、
ピン・ホールや亀裂が生じる可能性があります。
Auフラッシュ(金薄メッキ):極めて短時間で行う金メッキで、メッキ厚0.1~0.5umと薄いです。
保護構造
リレーの保護構造については気密性が高い程、耐環境性が高いですが、高価になります。
・ハーメチックシール型
内部に不活性ガス(N2)を封入し、金属又はガラス製のケースやカバーで密封した構造で、
腐食性ガスの侵入を防ぎ、腐食に耐えることができます。
・プラスチックシール型
ケースやカバーを樹脂で封入した構造で、細かいゴミや液体の侵入がしにくくなっています。
基板実装タイプ(G5Q)については、フラックス洗浄液の侵入も防止できます。
・閉鎖型
ケースに入れた構成で、大きなゴミや埃の侵入は防ぐことができます。
基板実装タイプ(G5RL)は耐フラックス仕様で、ケース下部とリード間は密閉しており、
半田実装時にフラックスが侵入にしくいですが、ケース上部は密閉されてないので、
フラックス洗浄液を上部から散布することはできません。
無接点リレー
光半導体を使用することで、機械的な接点を使用することなく電流をON/OFFできます。
接点が無いので、アークやチャタリングがなく、高速、長寿命で頻繁な動作に適しています。
また、駆動電流が小さく、マイコン等のICに直接接続して制御できるタイプもあります。
入力側のLEDの発光によって、信号を出力側に伝えることで絶縁性を持たせており、
出力側で使用する素子によって次の2種類に分けられます。
フォトモスリレー
出力素子にMOSFETを使用したもので、メーカーによって名称が異なり、
フォトリレー、MOS FETリレー等と呼ばれています。
LEDへの入力順電流が数mA程度なので、CMOS ICで直接駆動できるタイプが多いです。
SSR(ソリッド・ステート・リレー)
Solid State(固体状態)は可動部分が無い(半導体)を意味していることから、
一部メーカーでは、フォトモスリレーもSSRに分類していますが、
一般的には、出力素子にトライアックを使用しているものを指します。
LEDへの入力順電流が数十mAと大きいものがあり、CMOS ICでの直接駆動が難しい場合には
有接点リレーと同様にトランジスタを介して制御します。
本記事では出力にMOSFETを使用しているものをフォトモスリレー、
トライアックを使用しているものをSSRと呼ぶことにします。
フォトモスリレーとSSRの違いですが、
フォトモスリレーはON/OFFのタイミングを入力信号で制御できますが、
SSRはトライアックが一度ONすると、入力信号をOFFにしてもトライアックに流れる電流が
保持電流以下にならない限りOFFしないため、OFFタイミングは入力信号で制御できません。
SSRには入力信号が入っても、負荷電圧がゼロになるとONしないゼロクロスタイプと、
負荷電圧に関係無くONする非ゼロクロスタイプがあります。
ゼロクロスタイプ
入力信号が入っていも、AC負荷電圧がゼロ電圧付近になってからONするので、
突入電流を抑制できます。
OFF時もゼロ電流近くで行うため、ノイズが小さくなります。
但し、ONタイミングが低電圧の期間に限られているため、位相制御はできません。
非ゼロクロスタイプ
OFFタイミングはゼロクロスタイプと同じですが、
AC負荷電圧の位相に関係なく、入力信号が入るとすぐにONします。
従って、AC負荷電圧に対し、入力信号が入るタイミング(位相)を変えることで、
負荷電流を調整できる位相制御を行うことができます。
コラム1:フォトカプラのパッケージ色が白色である理由
フォトカプラやフォトモスリレー等のパッケージですが、一般的な黒色以外に白色もあります。
白色にする理由は、入力側のLED光を白色樹脂が反射して、間接光も取り込むことで、
僅かな光量(電流)でも信号を出力できることで、消費電力を低減できます。
黒色パッケージでも内部が透明の樹脂で二重にモールドされた
ダブルモールド型は沿面距離を長くできるので、絶縁特性に優れています。
リレーの使い方
リレーの使い方について、入力(コイル)側と、出力(接点)側について説明します。
入力(コイル)側の接続方法
<逆起電圧保護回路>
有接点リレーを制御する場合、リレーコイルの働きにより、
トランジスタが出力オフした時に逆起電圧が発生してしまいます。
この逆起電圧は電源電圧よりも大きい電圧になるため、
トランジスタの耐圧を超えて故障する場合があります。
逆起電圧が発生する仕組みについて説明します。
トランジスタQ1がON時にコイルに10mA流れていたとします。
Q1がOFFすると回路が遮断されますが、これはコレクタ・エミッタ(CE)間に
非常に大きな抵抗が生じたと考えることができます。(ここでは、仮に1MΩとします)
コイルは流れる電流を維持しようとする働きをします。
つまり、抵抗1MΩに10mA流れる事になるので、コレクタ・エミッタ間電圧Vceは
Vce=R × I=1MΩ × 10mA=10kV
と非常に高い電圧になります。(実際には、ここまで高電圧にはなりません)
従って、ダイオードをコイルに並列接続し、
Q1がOFF時にコイルが流そうとする電流を即断しないようすることで、
逆起電圧の発生を抑制することができます。
この時、使用するダイオードの逆電圧は、電源電圧の3倍程度にします。
また、トランジスタがオンに切り替わった際の逆電流による損失を小さくするため、
逆回復時間の短いダイオードを使用します。
順電流については、ON時にコイルに流れる電流がOFF時にそのまま流れるので、
コイル電流が順電流の定格の80%以内に収まるようにします。
コイル電流が数十mA程度の小型リレーであれば、
スイッチングダイオードが使えますが、数Aレベルの電流が流れる場合は、
順電流が大きいファストリカバリダイオード(FRD)を使用します。
ダイオードの接続はコイルとの配線が長いと逆起電圧の抑制効果が下がるので、
できるだけリレーコイルの近くに配置します。
また、コイルに電流が流れるとノイズが発生するため、
リレーコイルの下には基板のパターンを配線しないようにします。
ここでは、オムロン製小型リレー(コイル定格:DC12V)を、
東芝製NPNトランジスタ2SC2712で制御する場合の例です。
この例では、東芝製スイッチングダイオード1SS250を使用してます。
このダイオードは逆電圧200Vで、逆回復時間60nsと短いです。
順電流は0.1Aと大きくないですが、
コイルの定格電流が9.1mAと十分に小さいのでOKです。
順方向電圧VFが1.2Vなので、逆起電圧を12V+1.2V=13.2Vに抑えることができ、
2SC2712のコレクタ・エミッタ間電圧Vceの最大定格50V以内になります。
この逆起電圧を抑制するダイオードの欠点ですが、コイル電流が直ぐにゼロにならないので、
リレーをオフする時間が遅れます。
また、コイルに流す電流が大きく、頻繁にON/OFFを繰り返す場合、
ダイオードを経由して大電流が電源に定常的に流れ込む事で、
電源電圧が徐々に上昇し、他の部品が耐圧オーバーで破壊する恐れがあります。
ダイオードの選び方については下記記事で解説しています。
出力(接点)側の接続方法
<接点保護回路>
先程はリレーのコイルによる逆起電圧から駆動回路(トランジスタ)を保護しましたが、
ここでは、リレーがON/OFFするモーターやランプなどの誘導性負荷による逆起電圧から
リレーの接点を保護する方法について説明します。
以下の説明図では有接点リレーの接点が記載されていますが、無接点リレーも対象になります。
(リレーの最大負荷電圧を超えないようにする)
逆起電圧からリレーを保護する方法は大きく分けて3つあります。
・CRスナバ回路でエネルギーを吸収する
・ダイオードで電流を逃がす
・バリスタで電圧を押さえる
保護回路を接続する位置ですが、一般的には負荷電圧が高い場合は負荷の両端に、
低電圧の場合は接点間につけると効果的な場合が多いです。
また、保護回路との距離が長いと、逆起電圧の抑制効果が低減するため、
配線は出来るだけ太く短くします。
負荷接続方法
リレーの負荷側への接続は以下の点を考慮して行います。
・複数の接点を並列接続しても許容電流は大きくならない
ON/OFFのタイミングは接点によって僅かにズレるため、
一時的に1つの接点に全電流が流れるため、許容電流を増やすことはできません。
・リレーをACとDCどちらでも配置して良い場合はAC側にする
リレーには、ACとDC両方で使用できるものもありますが、
基本的にはDCの方がリレー接点の定格電圧が低くなっています。
その理由ですが、接点がOFFするとアーク放電が発生しますが、
ACは周期的に電圧がゼロになるタイミング(ゼロクロス)で放電が消滅するのに対し、
DC電圧はゼロクロスが無いため、放電はすぐに終了せず、
その分、接点の負担が増えることから、DC定格電圧は低く設定されています。
このため、接点の接続をACとDC、どちらでも良い場合はAC側にすることで、
接点の消耗を抑え、リレーを長寿命化できます。
・DC負荷の場合、接点を+側に接続する
リレーを装置へのDC電圧入力に使用する場合、
GND側に接点を接続すると、OFF時は装置のGNDが浮いた状態となり、
+側だけ接続されることで入力電圧が不安定になり、誤動作の恐れがあります。
このため、接点を+側にすることで、入力電圧を安定させます。
・複数接点の場合、負荷を同じ極性に接続する
2a接点などの多極リレーにおいて、接点と負荷を異なる極性に接続すると、
リレー内部の隣接する接点間電圧が高くなり、
絶縁破壊による電源ショートの恐れがあるため避けます。
・トランスファ接点によるモータ極性切替は逆起電圧に注意する
2c接点を使った図の様なモータの正逆転切替は逆起電圧によって接点間にアーク放電が発生し、
電源ショートによる大電流で接点が損傷を受けます。
対策としては、図の様にリレーを2個使用し、アーク放電による電源ショートを回避します。
・一つのリレーで大電流負荷と小電流負荷の開閉を行わない
有接点リレーの場合、大電流負荷の開閉で生じた生成物が小電流負荷用の接点に付着すると、
アーク放電による接点表面のクリーニング効果が得られず接触障害を起こすため、
大電流負荷と小電流負荷とはリレーを分けて使用します。
・微小電流負荷にはブリーダ抵抗を並列に接続する
無接点リレーの場合、OFFでも漏れ電流が流れてしまうため、
微小電流でも動作する負荷に接続した場合には注意が必要です。
LEDの場合、微小電流が流れると僅かに点灯(暗点灯)する可能性があるため、
負荷と並列にブリーダ抵抗(※)を挿入し、漏れ電流がLEDに流れない様にします。
※シャント抵抗と呼ぶこともあります。ブリーダ抵抗の原理についてはコラム2を参照。
・接点面が垂直になるようにリレーを配置する
有接点リレーの場合、接点面が垂直方向になるようにリレーを取付けることで、
埃や、開閉によって生じた生成物が接点面に付着しずらくなります。
また、装置の振動方向と接点の動作方向が同じにならないように配置することで、
振動による接点誤動作の可能性を低減します。
コラム2:LEDに並列抵抗をつけると暗点灯を防止できる理由
ダイオードはある程度の電圧が印加されないと電流は流れません。
その電圧はLEDのデータシートに記載されている順方向電圧VFであり、
VF以下だとLEDは発光しないことになります。
LEDの両端にブリーダ抵抗Rを接続し、そこに電流IRが流れると、
Rの両端に電圧VR=R × IRが発生しますが、これはLEDに印加される電圧と等しいです。
LEDのVFは一般的には2V程度であることから、
VRが2VにならないとLEDに電流が流れず、電流は全てブリーダ抵抗に流れます。
例えば、無接点リレーの漏れ電流が0.1mAの場合、ブリーダ抵抗を20kΩにすると、
リレーがOFFした時のブリーダ抵抗間の電圧VRは以下になります。
VR=20kΩ × 0.1mA=2V
従って、ダイオードの電圧も2Vとなり、LEDにも電流が流れるようになりますが、
元となる電流は0.1mAのままなので、その分IRが減ることでVRが低下し、
ダイオードの電圧も2V以下となってLEDには電流が流れないことになります。
リレーがONすると電流が多く流れるので、LEDに電流が流れてもIRに流れる分は減らず、
VRが低下しないので、ダイオードの電圧のVFを維持できるのでLEDは点灯できます。
(厳密には、順方向電流IFが増えるとVFも若干上昇するため、IRもその分、増えます)
フォトカプラについても同様の理由で並列抵抗をつける方法について解説しています。
LEDに流す電流と実際の明るさについては下記記事を参考にして下さい。
有接点リレーの駆動回路
トランジスタによるリレー駆動回路
オムロン製リレーG5V-1(コイルの定格電圧5V、抵抗167Ω、電流30mA)を
東芝製NPNトランジスタ2SC2712で制御する回路です。
コイルの逆起電圧防止のため、ローム製スイッチングダイオードを接続しています。
(1SS355VM:逆方向電圧90V、順電圧1.2V、順電流100mA)
選定理由は先述した「リレーの逆起電圧保護回路」を参照。
使用するトランジスタの目安ですが、
最大コレクタ・エミッタ間電圧Vceは電源電圧Vccの2倍以上、
最大コレクタ電流Icはコイル電流の2倍以上になるようにします。
2SC2712のVceは50VなのでVcc(5V)の10倍、
Icはコイル電流30mAの5倍となる150mAなのでOKです。
このトランジスタをスイッチ(飽和領域)として使用するため、
ON時のコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を低くする必要があり、
そのために流そうとするコレクタ電流Icに対して、ベース電流Ibを十分流す必要があります。
2SC2712のデータシートを見ると、Vce(sat)の条件がIc/Ib=10なので、
Ic=30mAの1/10となるIb=3mA以上流れるようにベース抵抗Rbを選定します。
※ベース抵抗の決め方については、下記記事で解説しています。
VbeはVbe-Ic特性より、Ic=30mAの時、Vbe=0.8Vなので、
Rb=(VinーVbe)/ Ib = (5V ー0.8V)/ 3mA = 1.4kΩ
ここで、Rbに1kΩを選択した場合のベース電流は
Ib=(VinーVbe)/ Rb = (5Vー0.8V)/1kΩ ≒ 4.2mA
トランジスタが流すことができる(※)コレクタ電流は以下になります。
Ic=hfe × Ib= 10 × 4.2mA=42mA
※42mAまで流すことが可能という意味であり、実際に流れる電流はコイル抵抗によって決まる30mAです。
ベース・エミッタ間抵抗は一般な値である10kΩとします。
ベース・エミッタ間抵抗値の決め方については下記記事で解説しています。
トランジスタでの損失はコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)ーIc特性より、
Ic=30mAでのVce(sat)は0.07Vなので、
Pc=Vce × Ic=0.07 V × 30mA=2.1mW
とトランジスタの許容損失150mWと比べ非常に小さく、問題ありません。
デジタルトランジスタを使用した場合
NPN+PNPがワンチップのデジトラを使い、
3.3V系マイコンの出力からDC24Vで動作するリレーを制御します。
ここでは東芝製RN4605を使います。
NPN、PNP共にR1=2.2kΩ、R2=47kΩで、IC/IB=20の時、VCE(sat)=0.3V です。
まず、PNPデジトラですが、PNPをオンさせる時、
マイコンのLレベル出力電圧VOLが0.4Vとすると、R1に流れる入力電流Ii1は、
Ii1=(3.3VーVBE1ーVOL)/R1
=(3.3Vー0.6Vー0.4V)/2.2kΩ
=1.04mA
R2に流れる電流IBE1は、
IBE1=0.6V/47kΩ≒0.01mA
ベース電流IB1は、
IB1=Ii1ーIBE1
=1.04ー0.01
=1.03mA
なので、IC/IB=20より、
IC1=20×IB1=20×1.03mA≒20mA
となり、IC1が20mA以下であれば、データシートより、VCE1=ー0.3Vになります。(※)
PNPがオフになるのは、ベース電流IB1がゼロとなるIi1<IBE1の時なので、
オフ入力電圧Vi(OFF)は、
Vi(OFF)=ーIi1×R1ーVBE1
=ーIBE1×R1ーVBE1
=ー0.01mA×2.2kΩー0.6V
=ー0.82V (※)
※マイナスが付くのは、ベース電圧やコレクタ電圧が基準となるエミッタ電圧より低い時に動作するためです。
エミッタ電圧は3.3Vなので、PNPがオフを維持できる入力電圧は
3.3Vー0.82V=2.48V
より、マイコンからの出力電圧が2.48V以上ならオフとなります。
次にNPNデジトラです。
PNPがオンの時、NPNのR1に流れる入力電流Ii2は、
Ii2=(3.3VーVCE1ーVBE2)/R1
=(3.3Vー0.3Vー0.6V)/2.2kΩ
=1.09mA
このIi2がPNPデジトラのIC1であり、
IC1が20mA以下になるので、VCE1=0.3V以下を維持できます。
R2に流れる電流IBE2は、
IBE2=0.6V/47kΩ=0.01mA
ベース電流IB2は、
IB2=Ii2ーIBE2=1.09ー0.01=1.08mA
PNPと同様に、IC/IB=20より、
IC2=20 × IB2=20 × 1.08mA ≒ 21.6mA
リレーコイルの定格電流が、これより小さければ、VCE2=0.3V以下を維持できます。
NPNがオフするのは、Ii2<IBE2=0.01mAの時であり、
PNPがオフすればIC1(つまりIi2)がゼロになるので、NPNもオフします。
OFF時に発生する逆起電圧でデジトラが故障するのを防止するため
リレーコイルと並列にダイオードを接続します。
デジトラの使い方については下記記事で解説してます。
トランジスタアレイを使用した場合
複数のリレーを制御したい場合に使用します。
TBD62083A 8回路入り トランジスタアレイ(東芝製)
これはトランジスタアレイとして有名だったTD62083Aの後継品です。
当時はオープンコレクタ出力でしたが、
今はFETになり、オープンドレイン出力となっていますが動作は同じです。
入力Hで内部FETがオンすると出力がLになるので、論理が反転します。
(論理信号を反転したくない場合は非反転型のTBD62783Aがあります)
このICは出力電圧50V、出力電流0.5Aまで流す事ができます。
(但し、温度、ON期間、複数同時ON等の条件で許容電流は減少します)
注意点として、このICはオープンドレイン出力なので、自ら電圧を出力できません。
出力がスイッチになっていると考えて下さい。これはオープンコレクタと同じ考え方です。
ちなみに、このICに電源ピンVccはありません。
内部はFETそのものなので、入力信号を加えれば動作します。
このFETの出力耐圧は最大50Vなので、
外部から電圧を加えることで、15Vにも24V出力にもできます。
マイコンからのH信号でFETがオンして、コイルに電流が流れてリレーが動作します。
L信号でFETがオフしますが、この時、リレーコイルの逆起電力による
電圧上昇でFETの定格電圧を超える恐れがあります。
その場合は、COM端子にリレー電源24Vを接続します。
これにより、トランジスタアレイ内のクランプダイオードにより、
24Vを超えたら24V電源に電流が流れるので、FET出力(O1)の電圧上昇を防ぐことができます。
但し、オフしてもすぐに電流が遮断できなくなるので、
COM未接続時より、リレー停止が少し遅れます。
このため、逆起電力発生の恐れが無いLEDを接続する場合は、
COMは未接続で使用した方がLEDをすぐ消灯できます。
オープンコレクタについては下記記事で解説しています。
無接点リレーの駆動回路
有接点リレーは基本的に電圧駆動なので、コイルに定格電圧を印加すれば良いのですが、
無接点リレーはLEDに電流を流し発光させることで駆動させる電流駆動のため、
24Vなどの電圧をそのまま印加するとLEDに電流が流れ過ぎて壊れてしまいます。
このため、電流制限抵抗を接続し、流れる電流をLEDの定格順電流値以内に制限します。
(※電流制限抵抗を内蔵した電圧駆動タイプもあります)
本記事では東芝製フォトモスレーTLP241Aの制御をトランジスタで行う場合と、
マイコン等のCMOS ICで行う場合について説明します。
※SSRでも回路構成は同様ですが、LEDへの入力順電流がフォトモスリレーの数mAに対し、
SSRは十数mA必要なものがあり、CMOS ICでは直接駆動できない場合があります。
トランジスタで駆動する場合
電流制限抵抗Rinは以下の式で求められます。
Rin=(VccーVFーVce(sat))/IF
TLP241Aの入力順電流IFですが、推奨動作条件5~25mAより10mAに設定した場合、
入力順電圧VFは特性グラフより1.27Vです。
ここで、コレクタ電流Ic≒IF(※)とすると、2SC2712のVce(sat)ーIc特性グラフより、
IC=10mA時のコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)は0.05Vなので
Rin=(5ー1.27ー0.05)/10mA=368Ω≒360Ω
※この後説明するブリーダ抵抗Rsを接続した場合、Rs側にも電流Isが流れるので、
Ic=IF+Isとなりますが、Rsの値は大きく、IFに比べIsは非常に小さくなります。
Rinを360Ωにした時のIFを再計算すると
IF=(VccーVFーVce(sat))/Rin=(5ー1.27ー0.05)/360≒10.2mA
Rinの消費電力Pを計算すると、
P=Rin × Ic2=360Ω × (10.2mA)2 ≒ 37.5mW
となり、定格電力1/4W(250mW)の抵抗を使用した場合、
余裕度(ディレーティング)を50%としても許容電力は、250 × 0.5=125mWとなり、
使用に問題ないことがわかります。
また、トランジスタがOFF時、トランジスタの漏れ電流やノイズによって、
LEDに僅かな電流が流れることによるリレーの誤動作を防ぐため、
ブリーダ抵抗Rsを接続する場合もあります。
ここでRsを10kΩにすると、Rsの両端の電圧はVFになるので、Rsに流れる電流Isは
Is = 1.27V/10kΩ ≒ 0.13mA
となり、0.13mAまではLEDに電流が流れないため(※)、誤動作を防止できます。
※ブリーダ抵抗の原理については、先述のコラム2を参照
また、Rsを接続したことによりIFはその分減りますが、ごくわずかです。
IF=IcーIs=10.2ー0.13=10.07mA
R1、R2の値については、有接点リレーの駆動回路で説明した通り、
Ic=10mAの1/10となるIb=1mA以上流すことができるように選定します。
VbeはVbeーIc特性より、Ic=10mAの時、Vbe=0.7Vなので、
R1=(VinーVbe)/ Ib = ( 5V ー0.7V ) / 1mA = 4.3kΩ
CMOS ICで駆動するする場合
CMOS ICの場合、出力LでLEDに電流が流れてリレーが動作します。
Lレベル出力電圧をVOLとすると、電流制限抵抗Rinは以下の式で求められます。
Rin=(VccーVFーVOL)/IF
使用するCMOS ICのVOLが0.4Vとすると、
Rin=(5ー1.27ー0.4)/10mA=333≒330Ω
IF=(5ー1.27ー0.4)/330Ω≒10mA
出力HでリレーがOFFになりますが、この時、CMOS IC内の上段FETがONしているので、
LEDのカソード側もほぼ5Vとなり、順電流が流れることは無い事からブリーダ抵抗は不要です。