シリーズレギュレータ、リニアレギュレータの設計方法 | アナデジ太郎の回路設計

シリーズレギュレータ、リニアレギュレータの設計方法

回路設計

この記事で分かること

・トランジスタを使った定電圧回路の動作原理と設計方法がわかる。
・消費電力の求め方と、ダイオードを使った保護の方法がわかる。

リニアレギュレータとシリーズレギュレータの違いについて

この2つは、ほぼ同意語と言っても良いかと思いますが、
厳密にはリニアレギュレータの1種がシリーズレギュレータで、その他にシャントレギュレータがあります。

 リニアレギュレータ:入力-出力電圧特性が直線的(リニア)な電源回路

 シリーズレギュレータ:入力~出力間に直列(シリーズ)に電圧制御部品がある電源回路
            ドロッパとも呼ばれます。

 シャントレギュレータ:入力~出力間に並列に電圧制御部品がある電源回路

シャントレギュレータは見た目はトランジスタのような形状の3本足の電子部品です。
TI(テキサス・インスツルメンツ)製のTL431が有名で、他社でも**431という型名でセカンドソース品が多くあります。

出力電圧精度が高い(1%以下もあり)ので、基準電圧に利用されます。
但し、負荷の大小に関係なく一定の電流が流れるので効率が非常に悪く、電力供給には向きません。

本記事では、シリーズレギュレータの詳細について説明します。

シリーズレギュレータの動作原理

下図はシリーズレギュレータの基本回路です。
トランジスタとツェナーダイオード(以下、ツェナーD)と抵抗の3点で構成されます。

トランジスタの向きを見ると難しそうに見えますが、実は簡単な動作原理です。
以下の原則だけ覚えておけばOKです。
 「ベース電圧VBよりも0.6V低い電圧がエミッタ電圧VEに出力される」

この回路はツェナーDの電圧Vzは一定で、その電圧がそのままベース電圧VBになるので、
先程の原則より、エミッタ電圧VE=ツェナー電圧Vz ー 0.6V となります。

Vout=VEなので、
 出力電圧Vout=ツェナー電圧Vz ー 0.6V
という動作になります。
ツェナー電圧Vz=12Vなら、12V出力回路になるという訳です。

このような動作になる理由について説明します。
トランジスタはB-E間をダイオードに置き換えて考えることができます。
わかりやすくするためにトランジスタの向きを変えた図にします。

B-E間は順方向のダイオードになるので、
ダイオードの順方向降下電圧V分だけ低下してエミッタに出力されます。
ベース・エミッタ間飽和電圧VBE(sat)としてデータシートに記載されています。
一般的なトランジスタは0.6V程度です。

負荷が増える(負荷抵抗が減少する)と、Voutが低下してB-E間電圧VBEが大きくなります。
VBEが大きくなると、ダイオードに流れる電流 (ベース電流) が増えます。

この時、トランジスタはコレクタ電流Ic=hFE×IBとなるように動作するので、ICは増加します。
これは、VCEが小さくなることを意味するので、Voutが元の電圧まで上昇します。

従って、トランジスタはVBE=0.6Vになるように動作するので、Voutを一定に維持できます。



シリーズレギュレータの設計方法

入力電圧12V 出力電圧5V   出力電流100mA (0.5W出力)回路を例にします。

まず、トランジスタを選定します。
トランジスタでの損失は (入力電圧ー出力電圧) × 出力電流 なので、
  (12Vー5V) × 100mA = 700mW

コレクタ損失Pcがこれより大きく、コレクタ電流Ic=100mA流せるものを選びます。
   2SCR533P5   VCEO=50V 、 IC=3A、Pc=2W (放熱必要)
データシートより、IC=100mA時のVBE=0.65V、hFE=300となります。
 ※VBEとhFEの値は特性曲線の周囲温度Ta=25℃と75℃の中間値付近としています。

ツェナーDはVz-VBE=5VとなるようにVz=5.6VのツェナーDを選びます。
      UDZV5.6B   Vz=5.49~5.73V (Iz=5mA)

出力電圧Voutは以下になります。
 out=Vz-VBE= (5.49~5.73V) ー 0.65V =  4.84~5.08V

抵抗Rはツェナー電流Izとベース電流IBが十分流すことができる値にします。
ツェナー電流Izは、データシートより、ツェナー電圧Vzの条件5mAとします。
 ※ツェナー電流を十分に流さないとツェナー電圧が維持できません。

ベース電流IBは、コレクタ電流を100mA流す場合、hFE=300なので hFE=Ic/IBより、
  IB=IC/hFE=100/300=0.33mA となります。
 ※このIBもエミッタから負荷に流れるので、負荷電流は厳密にはIC+IBになりますが、
   ICに比べ、IBは非常に小さいので、無視して問題ありません。

Iz+IB=5+0.33=5.33mAを流せるように抵抗Rの値を決めます。
  R=(VinーVz)/5.33mA=(12ー5.6)/5.33=1.2kΩ

シリーズレギュレータの消費電力の計算法

消費電力の計算は、レギュレータにかかる電圧×電流で求めます。
電圧は入力電圧Vin=12Vなので、後は電流が分かれば計算できます。

 電流の流れるコースは2通りあります。
  ①抵抗Rに流れるコース
  ②トランジスタのコレクタに流れるコース

①は、抵抗R、ツェナーD、ベース電流で消費されます。
電流値は抵抗Rの算出時に5.33mAと分かっているので、
消費電力は12V × 5.33mA =64mW  となります。

②は、トランジスタと負荷で消費されます。
負荷に100mA流れた場合、トランジスタ内で消費される電力は、
(供給電力)-(負荷で消費される電力) になるので、
 (12V×100mA)-(5V×100mA)=1200-500=700mW
となります。

シリーズレギュレータの消費電力は①②の合計になります。
  ①+②=64+700=764mW

この時、各部品の発熱は問題がないか確認します。

抵抗の消費電力はP=R × I2=1.2k × (5.33)2 ≒ 34mW
100mW(1/10W)の抵抗で問題ありません。

ツェナーDについては、無負荷時(IC=0A)が最も電流が流れます。
その理由は、Icが流れなければ、ベース電流IBも殆ど流れなくなり、
抵抗Rに流れる電流が全てツェナーDに流れるためです。

その場合のツェナーDの消費電力は
 Vz × Iz=5.6V × 5.33mA ≒ 30mW
UDZV5.6Bの許容損失は200mWなので問題ありません。

トランジスタは、2SCR533P5の許容損失は
  0.5W(放熱無)~2W(セラミック基板から放熱)と条件によってかなり差があります。
先程の計算で0.7Wなので、基板のパターンを広めにとって放熱できるようにします。



シリーズレギュレータの保護回路

トランジスタや出力先のIC等を保護するため、以下の対策があります。

<C-E間にダイオードを接続>
 電源OFF時など入力Vinが低下時に、出力Voutがコンデンサの残留電圧で低下が遅くなり、
 Vout>Vinとなる場合があります。

 これは、ベース電圧よりもエミッタ電圧の方が高くなることを意味します。
 トランジスタのベース~エミッタ間最大電圧は5V程度と低いため、壊れる可能性があります。

これを防ぐため図のようにC-E間にダイオードを接続します。
エミッタ電圧の方が高くなったら電流を流すことで、Voutを低下させます。
このダイオードは順方向電圧VFが低いショットキーダイオードが適しています。

但し、入力電圧がトランスを介して供給する場合などVinが瞬間的に大きい値になる可能性がある場合はトランジスタのC-E間の耐圧を超えないように、ツェナーDの方が良い場合もあります。

この場合、ZD1によりC-E間は30Vで抑えられ、50V耐圧のトランジスタなら保護できます。
また、ZD2で5V駆動ICへも5.6V以上は入らないようにします。

それ以上の大きな過電圧が入ると、たいていの場合、ZD1、ZD2が先に壊れます。
ZD1、ZD2は故障するとショート状態になり、GNDにつながるため、
トランジスタと出力先のICに過電圧が印加されることを防いでくれます。

<出力にダイオードを挿入>
 シリーズレギュレータを並列接続する場合など、Voutに別電源から電圧が印加される場合、
 Voutより電圧が少しでも高いと、電流が逆流して入ってくる恐れがあります。

これを防ぐためにダイオードでブロックします。
ただし、ダイオードの順方向電圧分、出力電圧が低下し、VF×負荷電流分 損失が増えます。
このため、VFの小さいショットキーダイオードなどを使用します。

 <トランジスタの詳細については下記の記事で解説しています>

 <回路工作で役立つ工具類を下記の記事で紹介しています>