本記事で分かること
伝導エミッション試験の基礎知識(試験方法と判定基準)が理解できる。
伝導エミッションとは?
製品の電源ケーブルや通信ケーブルを経由し周辺機器に悪影響を与える電磁波ノイズの事です。
雑音端子電圧、伝導妨害、伝導EMI、伝導ノイズとも呼ばれます。
本記事を読む前に以下の記事を読んでおくと、理解しやすいです。
AMN、AAN、LISN、ISNとは?
伝導エミッション試験では疑似回路網を使用します。
これは測定するケーブルの種類によって名称が変わります。
・電源ケーブルの場合
AMN(Artificial Mains Network 擬似電源回路網)
LISN(Line Impedance Stabilization Network ラインインピーダンス安定化回路網)
・通信ケーブルの場合
AAN(Asymmetric Artificial Network 非対称疑似回路網)
ISN(Impedance Stabilization Network インピーダンス安定化回路網)
AMN,AANは国際規格CISPR、LISN,ISNは米国規格FCCで呼ばれている名称です。
CISPRは国際規格なので、一般的な表現はAMNなのでしょうがあまり見かけません。
LISNをよく目にします。
でも何故か、LISNの説明が「ラインインピーダンス安定化回路網」でなく、
AMNの正式名称である「疑似電源回路網」として説明されている事が多いです。
伝導エミッション試験方法
製品(EUT)のケーブルから出るノイズを疑似回路網(LISN又はISN)を通して測定します。
※EUTについては「EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識」を参照下さい。
測定条件は以下の通りです。
・シールドルーム又は電波暗室で測定する
外部ノイズの影響を遮断できる部屋です。
放射エミッションでは必ず暗室でしたが、伝導エミッションについては、
計測周波数が30MHz以下と(EMCの世界では)低周波なので、
空間を伝搬しにくいことからシールドルームでも可能です。
EMCサイトでは放射エミッションと同じ電波暗室で測定することが多いです。
・金属板(グランドプレート)上で行う
製品は高さ40cmの絶縁物の台の上に置きます。
LISNは金属板の上に置き、スペアナは金属板の外か絶縁物の台の上に置きます。
・LISNと製品との距離は80cmにする
つまり、コードの長さも必然的に80cmは必要になります。
コードがそれより長い場合は30~40cmの長さで束ねます。
・測定するライン L相とN相(単相の場合)を切り替える
電源ケーブル内の単線(単相ならL,N)毎に測定を行う。
測定する線(相)の切替えはLISNで行うことができる。
以上の条件で測定して、準ピーク値(QP)及び平均値(AV)が限度値以下になるようにします。
限度値、つまり判定基準は規格によって異なります。
※QP値については、「EUT、10m法、QP値とは? 放射エミッション試験の基礎知識」を参照下さい。
伝導エミッションの判定基準
伝導エミッションの国際規格はCISPR(シスプル)になります。
・CISPR 11
ISM機器(industrial, scientific, medical 工業、科学、医療用)が対象
対応する欧州規格:EN 55011
測定対象:電源ケーブルのみ
・CISPR 32
MME機器(multimedia equipment マルチメディア)が対象
対応する欧州規格:EN 55032
日本の自主規格VCCI(ブイ・シー・シー・アイ)もこれに対応
測定対象:電源ケーブル及び通信ケーブル
規格によって(つまり対象機器によって)限度値が異なります。
また、同じ規格(対象機器)でも使用環境によってクラス分けされています。
クラスA:工業地域
クラスB:住宅・商業地域
クラスBの方が基準が厳しい(限度値が10dB低い)
限度値のグラフ(VCCI クラスB)は以下の通り
500kと5MHzを境に限度値が異なります。
クラスAの場合は+10dBします。
範囲は殆どの規格が150k~30MHzですが、CISPR15(照明機器)は9kHzからになります。
伝導エミッションの概要については以上です。
限度値を超えた場合の対策法については、以下のまとめサイトで解説しています。
以下の記事で、EMC対策で役立つ工具類を紹介しています。