【電解コンデンサ】リップル電流・温度測定方法と寿命計算

部品選定



この記事でわかること

リップル電流の測定方法がわかる
コンデンサの温度測定方法がわかる
Excelシートを使って寿命を算出
・寿命を延ばすための対策がわかる

電解コンデンサは電子部品の中で寿命が短く、
『電解コンデンサの寿命=設計する製品寿命』
と言っても過言ではありません。

電解コンデンサの寿命は温度による影響が大きく、
周囲温度と、リップル電流による自己発熱が
寿命を左右する主な要因
となります。

本記事では、電解コンデンサの温度測定と、
リップル電流測定方法を説明します。

また、本サイトからダウンロードできる
エクセルシートを用いた寿命計算方法
を解説します。

電解コンデンサの寿命計算式

電解コンデンサの寿命計算式は2種類あります。

どちらの式を使うかは、データシートを見て、
耐久性を規定している条件によって使い分けます。

・定格リップル電流で耐久性を規定している場合

・定格印加電圧で耐久性を規定している場合

Lx:推定寿命
Lr:規定寿命
To:カテゴリ上限温度
Tx:電解コンデンサのケース温度
ΔTo:定格リップル電流重畳時の自己温度上昇
    製品固有の値だが、一般的には5℃
   (正確な値はメーカーに問い合わせる)
ΔT:リップル電流重畳時の自己温度上昇

Ix:リップル電流測定値
Io:定格リップル電流

リップル電流が流れるかどうかは回路の用途で決まります。

・リップル電流が流れる回路
 平滑回路(入力電圧や出力電圧を安定化させる場合)

・リップル電流が流れない回路
 上記以外の回路
 (時定数回路など、印加されるDC電圧に変動がない場合)

リップル電流の測定方法

寿命計算をするために必要なリップル電流の測定には
電流プローブを用いて下図のように行います。

<注意>
電解コンデンサを基板から外す時は基板を痛めないように注意が必要です。

電解コンデンサはGND等の太いパターンに半田付けされているので、
半田コテを当てても熱が上がらず半田が溶けにくい為、
無理に取ろうとすると、スルーホールやパッドごと取れてしまいます。

安全確実に部品を外すための道具については、
下記記事で紹介しています。

測定したリップル電流波形の例を示します。

測定した電流波形から実効値と周波数を計測します。

周波数は、定格リップル電流Ioを求める際に必要となります。

<注意点>
電解コンデンサを並列接続している場合、
同じ容量でも、各コンデンサのリップル電流は必ずしも同じ値にはなりません。

パターン配線上、
入力に近いコンデンサのリップル電流が大きくなる事が多いので、
面倒でも、それぞれ測定することをお勧めします。

電解コンデンサの温度測定方法

電解コンデンサのケース温度Txは熱電対を使用して測定します。

熱電対はコンデンサ上部の
外装スリーブの無い所に取り付けます。

スリーブにつけない理由は、接着剤がつくと、硬化時にスリーブに亀裂が入る事がある為です。
但し、スリーブは絶縁材ではなく、単に表示用の外装フィルムなので、取れても性能に影響はありません。

このため、コンデンサの配置や、付近の発熱部品の影響で、
上面以外が高温になる事が予想される場合は、その部分での温度測定を検討する必要があります。

この時、熱電対を接着剤でつける際に
防爆弁の動作を妨げないように
防爆弁の溝の部分に接着剤が付かないようにします。

また、測定環境ですが、
コンデンサを搭載した基板単体で測定するのではなく、
基板を使用する装置(筐体)に組み込んだ状態で行います。

そして、必ず装置外の周囲温度Taも測定します。

この際、空調等の風の影響を受けると温度が安定しないので、
装置に対して十分大きな箱(段ボール箱など)で囲います。

温度測定を開始後、ケース温度Txの温度上昇が飽和したら、
その時の周囲温度Taと共に記録して、ケース温度上昇分ΔTxを求めます。
 ΔTx=Tx-Ta



電解コンデンサの寿命計算方法

寿命計算は、計算用Excelシートを使います。
Excelシート は下記からダウンロードできます。

※ダウンロード時のファイル名は「0ab0ac7814ee3fe1726254da54c517ee.xlsx」になっています。

ファイルには2つのシートがあり、
データシートで規定している耐久性の条件によって使い分けます。

・定格リップル電流で耐久性を規定している場合
 「寿命計算シート(リップル電流で規定)」

・定格印加電圧で耐久性を規定している場合
 「寿命計算シート(印加電圧で規定)」

<シート内の黄緑色の項目>
規定寿命、上限温度、定格リップル電流、定格リップル電流重畳時自己温度上昇
はデータシートの値を入力
します。

この時、定格リップル電流Ioは測定したリップルノイズの周波数に応じて
データシート記載の定格リップル電流周波数補正係数をかけた値を入力
します。

補正係数の求め方の例として、
日本ケミコン製EKMQ160ELL222MJ20S(16V 2200uF)の場合、
定格リップル電流は710mAです。

これを上記のリップル電流の測定波形から
リップルノイズの周波数は100kHzなので、
静電容量2200uFでの補正係数は1.08となります。

従って、定格リップル電流Ioは
710×1.08=766mA
となります。

定格リップル電流重畳時の自己温度上昇ΔTは製品固有の値ですが、
一般的には5℃になります。

(正確な値についてはメーカーに問い合わせる必要があります)

<シート内の黄色の項目>
リップル電流測定値、ケース温度上昇分測定値
は測定した値を入力します。

リップル電流測定値Ixは実効値なので、
先程の測定波形の場合、551mAとなります。

ケース温度上昇分測定値ΔTxは
熱電対で測定したケース温度Txから測定時の周囲温度Taを引いた値
になります。

例えばケース温度Tx=45℃で、周囲温度が25℃の場合、
ΔTx=Tx-Ta=45-25=20℃
となります。

これらの値を入力すると、周囲温度20℃~60℃におけるケース温度換算値Txと、
推定寿命Lxが計算されます。

この計算において、電解液の蒸散以外に封口ゴムの劣化などの要素を考慮する必要がある為、
ケース温度Txは40℃を下限とし、推定寿命Lxは15年を上限となるようにしています。

電解コンデンサの寿命を延ばす方法

計算の結果、寿命が短く改善が必要な場合は以下の対策があります。

<電解コンデンサのサイズを大きくする>
 コンデンサの直径が大きい程、規定寿命Lr(規定時間)が長くなります。

上記に記載したデータシートの耐久性の項目を見ると、
MKQシリーズの場合、Φ8までは1000時間ですが、
Φ10以上は2000時間になります。

回路サイズはできるだけ小さくしたい所ですが、
電解コンデンサについては、寿命を考慮して、径の大きいものを選びます。

<抵抗等の発熱部品から離して配置する>
 電解コンデンサの周囲温度を上げるため、抵抗などの発熱部品を離して配置します。

特に消費電力の大きいチップ抵抗は基板の温度を大きく上昇させるため、
コンデンサの裏面についていると影響が大きいです。

チップ抵抗の発熱については、下記記事で解説しています。

<製品の取付方向に注意する>
 発熱部品を電解コンデンサから遠ざけても、
 製品の取付方向によってコンデンサ周囲温度に大きく影響します。

下図の左側のように基板を水平に配置する場合は、
周囲の熱は上に流れるので、影響は少ないです。

しかし、上図の中央のように基板を垂直に配置する場合は、
コンデンサの位置が上だと、それより下の部品の熱が伝わってきます。

特に、上図の右側のように、
長手方向に縦置きした場合にコンデンサが上にあると
製品内部で、最も高い温度にコンデンサを晒すことになります。

基板内での電解コンデンサの配置を決める際は、
製品の取付方向と熱の流れも考慮するようにします。