セラミックコンデンサ(電圧、温度特性、許容差)の選び方

部品選定



この記事でわかること

・回路に応じたセラコンの選び方がわかる
・電圧、容量変化率など型番の読み方がわかる
・廃止や入手性を考慮して特性を選ぶ方法

セラミックコンデンサ(以下、セラコン)を選択する際は、
回路に応じたタイプを選定することは当然ですが、
一般的に良くある特性のものを選ぶことが重要です。

ここ数年、セラコンの供給不足による影響は大きく、
電気機器メーカーは、その確保に大変苦労してます。

セラコンは定格電圧や温度特性が多種にわたるため、
メーカー1社しか製造していない仕様のものを選ぶと、
入手難や廃止になった時に置き換えに苦慮することになります。

また、チップサイズも年々小型化し、一昔前は主流だった1608サイズも
大手メーカーが次々と生産中止したことから、
基板の変更や、再評価試験を行う事態が発生しています。

このような状況から、セラコンを選ぶ際は、
複数メーカーで存在する一般的な特性のものを採用する
べきです。

本記事では、回路に応じたセラコンの選び方と
入手性を考慮した特性の選定方法について解説します。

セラコンの型番から電圧、温度特性、許容差の読取り方

セラコンを選ぶ際は、まず型番から、その特性を読み取れるようになる必要があります。

特性を表す記号は型番に含まれており、どのメーカーでもほぼ共通です。

3桁の容量表示を基準にして、その前後が電圧と許容差と覚えておくと便利です。

<電圧>
電圧記号は3桁の容量表記の前にあります。
一般的によく使われるのは以下の電圧です。

  記号   定格電圧[V]
  0G     4
  0J     6.3
  1A     10
  1C     16
  1E     25
  1H     50
  2A     100

これ以外の電圧もありますが、
しかし、あまりレアな電圧を選ぶと、
廃止や入手困難になった場合に困る事になります。

電圧の選び方は、ディレーティングを考慮して、定格電圧の85%以内で使用します。

<温度特性>
温度特性を表す記号は電圧記号の前にあります。
温度特性は容量変化率で表され、次の2種類に分けられます。

・温度補償型
 温度による容量変化が非常に小さい(0.01%以下)  
 容量が小さいものしか無い(0.1uF以下)

一般的なものは以下の2つです。
    温度    容量変化率
CH :-25~85℃  0±60ppm/℃(0.006%)
COG:-55~125℃  0±30ppm/℃(0.003%)

他にもありますが、電圧同様、あまりない容量変化率のものを選ぶと
廃止や入手困難になった場合に困る事になります。

温度補償型はuFオーダの製品は殆どなく、
pFオーダが中心となります。

そのような低容量を必要とするのは高周波回路が多く、
容量が変化すると動作に影響するため、必然的に温度補償型が使用されます。

CHは日本(JIS)、COGは米国(EIA)の規格です。

どちらを選ぶかですが、ここまで精度が高いと、どちらでもOKです。

容量に正確さを求めるなら、この後で解説する許容差が数%レベルなので、
そちらの方が圧倒的に影響を受けます。

・高誘電率型
 温度による容量変化が大きい(10%以上) 
 容量が大きいものがメイン(100pF以上~数十uF)

一般的によくあるのは以下の5つです。
      温度  容量変化率
 JB(B) :-25~85℃ ±10%
 JF(F) :-25~85℃ +30%,-80%
 X5R   :-55~85℃  ±15%
 X7R  :-55~125℃   ±15%
 Y5V  :-30~85℃  +22%,-82%

JB・JFはJIS、X5R・X7R・Y5VはEIAの規格です。

uFオーダの容量を必要するのは
バイパスコンデンサ(パスコン)等のノイズ除去回路です。

この回路は多少の容量変化で動作に影響しない為、
高誘電率型を使用します

選び方ですが、JBかX5R・X7Rが良いです。
JFやY5Vだと高温85℃で容量が8割以上低下するので、
あまりおすすめできません。

<許容差>
許容差を表す記号は3桁の容量表記の後にあります。
許容差は以下の記号で表されます。

容量10pF未満
 B: ±0.1pF
 C: ±0.25pF
 D: ±0.5pF

容量10pF以上
 F:  ±1%
 G:  ±2%
 J:  ±5%
 K: ±10%
 M: ±20%

一般的によく用いられるのはJ、Kになります。

この許容差と、容量変化率の違いですが、
許容差は基準温度での公称値からの実際の容量のばらつきを表し、
容量変化率は、温度が変化した際に、実際の容量がどの程度変化するかを示します。

この基準温度とは、IECとJISは20℃,EIAは25℃になります。

つまり、公称値100pFで、許容差10%、温度特性JB(±10%)の場合、
20℃での容量が90~110pFの範囲(例えば90pF)にあって、
温度が -25~85℃に変化したら容量が±10%変化する(81~99pFに変化)という事になります。



温度補償型、高誘電率型の使い分け方

できることなら、全て温度補償型を使えれば問題ないのですが、
容量が大きいものがありません。

先程、0.1uFが上限と説明しましたが、0.1uFの温度補償型となると、
チップサイズが大きいもの(2012サイズ以上)か、
定格電圧が低いもの(10V以下)になります。

良く使う0603サイズで定格電圧50Vとなると、1000pF程度が上限です。

このため、0.1uF以上の容量で温度補償型を使うとなると、
チップサイズが大きいものを使うか、
耐圧に問題がなければ、並列接続する必要があります。

そのため、全てのセラコンを温度補償型にするのは、
製品の小型化やコストの面で現実的ではありません。

従って、使用する回路に応じて、以下のように使い分けます。

<オペアンプの位相補償回路>
出力を入力にフィードバックする部分で、セラコンを使って、
位相補償を行っている部分は、必ず温度補償型を使います。

周囲温度の変化で容量が変わると、位相がずれて
出力が振動する等の悪影響がでる為です。

同じオペアンプでも電源ピンに接続するバイパスコンデンサ(パスコン)は
ノイズ除去用なので、多少の容量変化は問題ないため高誘電率型でOK
です。

ちなみに、この回路の動作の仕組みを知りたい場合は、下記で解説しています。

<スイッチング電源のフィードバック回路>
出力電圧を監視して、電圧を一定に調整するフィードバック回路にも温度補償型を使います。

理由はオペアンプの位相補償と同様です。

このように出力から入力に戻すループ信号の部分に使用しているセラコンは
容量変化による影響がシビアなので、温度補償型を使います。

<ICのピンにセラコンを接続する場合>
ICのデータシート記載のブロック図や回路例から判断します。

下図はテキサス・インスツルメンツ製の力率改善(PFC)用ICのブロック図です。

外付け部品が多く、複雑そうに見えますが、
見るポイントを掴めば、セラコンを適切に使い分ける事ができます。

ブロック図の中で、オペアンプ記号があったり、
クロック信号やタイマーを生成している部分を見つけて、
その部分に使用するセラコンを温度補償型にすればOKです。

オペアンプがある部分は、フィードバックに使用されているので、
温度補償型を使用します。

内部クロック生成やタイマーなどの時間設定についても、
精度が要求されるので、温度補償型を使います。

<ICの電源供給ライン>
ICのVccピンとGNDピン間に接続するバイパスコンデンサ(パスコン)は、
電源ノイズ除去用なので、多少の容量変化は問題ありません。

パスコンは電源ラインの高周波ノイズを除去するため、
0.01uF~数uFが利用されるため、必然的に高誘電率型になります。

<ノイズフィルタ>
下図は外部5V機器からの入力をフィルタでノイズ除去したものを
5V信号→3.3V信号に変換し、マイコンに入力するデジタル入力回路です。

このようなセラコンを用いたローパスフィルタを構成する場合も
ノイズ除去用なので、高誘電率型が使えます。

この回路の動作の仕組みについては、下記で解説しています。

<以下の記事で、基板の部品交換や修正で役立つ工具類を紹介しています>