【具体例で解説】Xコンデンサ、Yコンデンサの役割と選び方 | アナデジ太郎の回路設計

【具体例で解説】Xコンデンサ、Yコンデンサの役割と選び方

Yコンデンサのノイズ低減効果 部品選定

この記事でわかること

・X/Yコンデンサの役割とクラス分類
・X/Yコンデンサによるノイズ低減効果
・電源回路におけるX/Yコンデンサの適用例

XコンデンサとYコンデンサは、電子機器へのAC電源入力部に設けることで、
外部から入ってくるノイズを除去したり、電子機器内部で発生したノイズを
電源側に放出させないようにする役割を持ちます。

本記事ではX/Yコンデンサの役割や特徴を説明し、実際のノイズ低減効果や
具体例を基にした設計方法について解説します。

<注意点>
本記事はX/Yコンデンサを使用する際の基礎知識を説明することが目的であり、
解説する製品の機能や回路の動作を保証するものではありません。

ここで紹介する設計方法が適切で無い場合がある為、
使用の際は、デバイスのデータシートを必ず確認の上、
回路への利用については自己責任でお願いします。

X/Yコンデンサの役割とクラス分類

以下の説明では、XコンデンサをXコン、YコンデンサをYコンと記します。

<Xコンの役割とX1、X2クラスについて>
XコンはAC入力のL相とN相間(※)に接続するコンデンサで、
図に示す様に、外部(AC電源側)からL相にノイズが入ってきたら、
Xコンを通してN相側に戻すことで、回路内部へのノイズ流入を防ぎます。
(N相にノイズが入った場合も同様にL相側に戻す)

AC電源入力回路におけるXコンデンサ、Yコンデンサの適用例

逆に、装置内部で発生したノイズもXコンを通すことで、
AC電源側へのノイズ放出を防ぐことができます。

Xコンで除去出来るのはノーマルモードノイズと呼ばれるもので、
Lから入ったノイズはNから出ていくため、LとNでノイズの方向が逆になることから、
ディファレンシャル(差動)モードノイズとも呼ばれます。

※Lはライブ(Live)の意味で、非接地側となり、ホット側とも呼ばれ、
 Nはニュートラル(Neutral)で、接地側となり、コールド側とも呼ばれます。
 コンセント正面から見て左側の長い穴がN、右側の短い穴がLになり、
 電線の色については、Lは黒、Nは白が使われます。

Xコンは安全規格(IEC 60384-14(※))により、2種類のサブクラス(X1、X2)に分類されます。
 ※電源用 電磁障害(EMI)防止固定コンデンサに関する規格

 X1:高パルス用 ピークインパルス電圧 2.5kV超 4kV以下 
 X2:一般機器用 ピークインパルス電圧 2.5kV以下
   

静電容量は大きいほど低周波領域でのノイズ低減効果が大きくなりますが、
電源投入時にXコンへの充電電流が大きくなることで突入電流が過大となり、
前段に設けるスイッチやヒューズ等への負担が増えます。

また、電源OFF後のXコンに充電された電荷が多く残るので、
コンセントから抜いた後も、残留電圧が高いまま維持されてしまい、
電源プラグに触れた際に感電する危険性があります。

このため、安全規格(IEC62368-1)(※)では電源OFF後、2秒以内に60V以下にする規定があり、
これをクリアするため、Xコンと並列に放電抵抗を設ける場合があります。

 ※IT機器やAV機器などが対象となる国際安全規格で、2020年12月から旧規格のIEC60950-1から移行されたものです。

この時、規定時間内に放電させるため、静電容量が大きいほど抵抗を小さくする必要があり、
その分、抵抗による電力損失が増えて、装置全体の効率に影響を与えてしまいます。

以上の理由から、一般的なXコンの静電容量は0.01uF~数uF程度となっています。

<Yコンの役割とY1,Y2クラスについて>
YコンはAC入力のL相又はN相とFG(※)間に接続するコンデンサで、
上図に示す様に、外部(AC電源側)からL相にノイズが入ってきたら、
Yコンを通してFG側に流すことで、回路内部へのノイズ流入を防ぎます。
(N相にノイズが入った場合も同様にFG側に流す)
 ※フレームグランドの意味で、電子機器の金属筐体(フレーム)に接続するグランド(接地)です。

逆に、装置内部で発生したノイズもYコンを通すことで、
AC電源側へのノイズ放出を防ぐことができます。

Yコンで除去できるのは、コモンモードノイズと呼ばれており、
これはLとNでノイズの流れる方向が同じ(コモン)であることから来ています。

Yコンについても、Y1からY4までのサブクラスがありますが、
Y3、Y4クラスは耐圧レベルが低く、現在では殆ど使われないことから、
ここではY1とY2クラスのみ紹介します。

 Y1:定格電圧範囲500V以下 ピークインパルス電圧 8kV 
 Y2:定格電圧範囲150V以上500V以下 ピークインパルス電圧 5kV
 

Y1クラスは強化絶縁or二重絶縁、Y2クラスは基礎絶縁or付加絶縁に対応してます。
 基礎絶縁や強化絶縁の適用については下記記事で解説しています。

【基板設計】安全規格に対応したパターン間隔の決め方
【本記事でわかること】基板のパターン間隔の決め方がわかる。安全規格への対応の仕方がわかる。

Yコンのカタログを見ると、耐電圧がY1クラスで4kV、Y2クラスで2.6kVとありますが、
ピークインパルス電圧と耐電圧は違います。

ピークインパルス電圧は耐久性試験で3回印加されるパルス幅50usのインパルス波形で、
耐電圧は耐電圧試験時に60秒間印加するAC電圧(50/60Hz)です。

インパルス電圧波形

Yコンが絶縁破壊を起こすと、ACラインが筐体と繋がって感電する恐れがあることから、
Xコンよりも高い耐圧性能を持ち、故障時はオープンになる構造となっています。

このため、故障時にショートする可能性があるXコンはYコンとして使用できませんが、
YコンをXコンとして使用することは可能
です。

但し、Yコンは静電容量が大きいと漏れ電流が大きくなり、感電の危険性が高まるため、
数千pFまでの製品が殆どなので、Xコンとして使うにはノイズ除去能力が低い
です。

X/Yコンデンサの特長と主な部品メーカー

Xコンには商用AC電源が直接印加されるため、外部からのサージ電圧に耐えられるように
高耐圧性を有するフィルムコンデンサが用いられます。

セラミックコンデンサも高耐圧性を持ちますが、静電容量が小さいものが多く、
Xコンに求められるuFオーダーの製品はフィルムコンデンサが主流となっています。

Xコンは短絡故障時の発火や延焼を防ぐため、コンデンサ本体を
高難燃性のプラスチックケース内に入れ、自己消火性樹脂で封止した構造のものが多いです。
そして、前段にヒューズを設けることで、過電流が流れ続けることを防ぎます。

一般的な電子機器に適用されるX2クラスの標準的な製品仕様としては、
定格電圧AC275V、静電容量範囲0.01uF~数uF程度
となっています。

フィルムコンデンサによるXコンの主な製品としては、岡谷電機のLEシリーズ等があります。
以前はパナソニック製のEUQUAシリーズがありましたが廃止となっています。

Xコンデンサ、Yコンデンサの外観

Yコンも高耐圧性を要求されるため、フィルムコンデンサも利用可能ですが、
漏れ電流を抑制するため、Yコンに求められる静電容量は数千pF程度と小さいことから、
小型で高周波特性が良いセラミックコンデンサが多く使用されています。

Y1クラスの標準的な製品仕様は、定格電圧AC250V、静電容量範囲10pF~4700pF程度で、
強化絶縁(空間距離)を確保するため、リード間隔が10mmに設定されているものが多いです。

Y2クラスも定格電圧や静電容量範囲はY1クラスと同じですが、基礎絶縁対応なので、
リード間隔は5.0mmや7.5mm等の狭い製品が一般的です。

Y1クラスの主な製品に、村田製作所のRA(旧KX)シリーズやTDKのCD45シリーズがあります。
Y2クラスには同上メーカ品で、RB(旧KY)シリーズや、CS45シリーズがあります。



X/Yコンデンサによるノイズ低減効果

ここでは、電源側に放出するノイズ(伝導エミッション)の低減効果を紹介します。

Xコン、Yコンによる伝導エミッションへの効果測定回路

伝導エミッションは雑音端子電圧とも呼ばれ、装置から電源ケーブルを通して
電源側に放出されるノイズを計測した波形で、CISPR(シスプル)と呼ばれる国際規格により、
対象機器毎に限度値が定められています。
 伝導エミッションについては下記記事で解説しています。

雑音端子電圧とは? 伝導エミッションの基礎知識
【本記事で分かること】伝導エミッション試験の基礎知識(試験方法と判定基準)が理解できる。
Xコンデンサによる伝導エミッション低減効果

ここに示す雑音端子電圧の波形は、あくまで参考例であり、
必ずしもノイズ低下を保証するものではありませんが、
Xコンにより50kHz以下、Yコンにより100kHz~10MHz帯のノイズ低減に効果が出ています。

(※本波形は後述するHWS50Aを計測したものではありません)

Yコンデンサによる伝導エミッション低減効果



X/Yコンデンサの適用例

スイッチング電源を例に、X/Yコンデンサがどのように使われているか解説します。
下図は、TDKラムダ製の50W出力AC/DCスイッチング電源HWS50Aで、
X2クラスのXコン2個と、Y1クラスのYコン2個が使われています。

AC/DCスイッチング電源におけるX・Yコンデンサ適用例

回路(※)を見ると、コモンチョークを設けることで、
高周波成分を持つノイズ信号が通過しにくくなり、
XコンやYコンでのノイズ低減効果を向上させています。
 ※外観より筆者が推測したもので、本来の回路とは異なる可能性があります。

50W出力 AC/DCスイッチング電源におけるXコン・Yコンの接続例

また、AC入力部分に放電抵抗を設けることで、
AC電源を遮断時にXコン(0.33uF+0.1uF)が放電し、L/N間電圧を低下させています。

RC時定数(660kΩ×0.43uF≒284ms)の2倍で約14%まで減少することから、
電源オフ後568msで、L/N間電圧が264V×0.14≒37Vまで低下するので、
2秒以内に60V以下の安全規格を満たしています。

使用する抵抗は耐サージ性の高い製品(KOA製SG73Gシリーズなど)を使い、
定格電圧と定格電力に余裕を持たせるため、1/4W品を3個直列にしています。

Xコンが短絡故障した場合はタイムラグヒューズにより遮断され、
回路内に過電流が流れ続けないようにしています。
また、バリスタを設けることで、Xコンでは吸収しきれない雷サージに対処しています。

Xコンデンサ放電抵抗とYコンデンサ間に設けるスリット

Yコンについては、リード間の基板に幅1mmのスリットを入れ、
沿面放電を抑制することで絶縁性を向上(※)させています。

※リード間で絶縁破壊する際、電流が流れるルートとして、
 空気中を経由する空中放電と、物体(絶縁物)の表面を経由する沿面放電があり、
 沿面放電の方が短い距離で発生することから、安全規格では沿面距離を空間距離より長く確保するよう要求しています。

 このため、スリットにより沿面放電のルートを迂回させることで距離を稼ぎます。
 安全規格ではスリット幅を1mm以上設けることで、沿面距離でなく空間距離として扱うことができます。

  空間距離と沿面距離については下記記事で解説しています。

【IEC62368-1対応】空間距離・沿面距離の求め方
【本記事でわかること】IEC62368-1における空間距離・沿面距離の求め方がわかる。旧規格IEC60950-1との違いがわかる。

このスイッチング電源ではYコンデンサのリードの片方がFGパターンにより端子台と、
ネジを介してシャーシに接続されています。

次に、YコンデンサによるFGへの漏れ電流を計算式、I=2πfCVから求めます。
静電容量C=1000pF×2=2000pF、ワーストケース(最大値)になる条件として、
電圧V=264V、周波数f=60Hzより、
 I=2×3.14×60×2000×10-12×264≒0.2mA
となり、HWS50Aの仕様である漏れ電流0.5mA以下を満たしています。

IEC62368-1限度値

この0.5mAは安全規格(IEC62368-1)において、商用周波数(50/60Hz)の場合、
一般人が接触しても問題ないレベルであるES1の限度値から来ています。
 電源の安全規格については下記記事で解説しています。

【電源回路の種類と選び方を解説】電源設計の基礎知識
本記事ではリニア電源とスイッチング電源について各種回路の原理や特徴、具体的な回路例を紹介することで電源回路設計に必要な基礎知識を解説します。