トランジスタにベース抵抗がついている理由 | アナデジ太郎の回路設計

トランジスタにベース抵抗がついている理由

回路設計

本記事で分かること

バイポーラトランジスタにベース抵抗がついている理由がわかる。

トランジスタは大別して、バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタ(FET)があります。
本記事では、バイポーラトランジスタを単に「トランジスタ」、電界効果トランジスタを「FET」と呼ぶことにします。

ベース抵抗がある理由

ベース抵抗は以下の効果があります
・トランジスタの故障を防止する
・トランジスタの動作を安定させる
・トランジスタを電圧制御可能にする

トランジスタは電流駆動型のデバイス(部品)です。
電流駆動型とは、その名の通り、入力する電流値の大きさで制御します。

電圧でなく、電流で制御と聞くと、なんとなく扱いにくいと思いませんか?(私がそうなので)

ベース抵抗をつけることで、トランジスタを電圧で制御できるようになり扱いやすくなります。

トランジスタの理解を簡単にする方法

理由を説明する前に、理解を簡単にする等価回路に置き替えます。
(ここでは、最もよく使うNPNトランジスタを例にします)

 ベース(B)~エミッタ(E)間 → PN接合なので、順方向のダイオードに置換え
 コレクタ(C)~エミッタ(E)間 → Ibをhfe(電流増幅率)倍した電流源に置換え

 (つまり、コレクタ電流 Ic = hfe × Ibが流せるということ)

厳密には、この等価回路は活性領域しか適用できませんが、ここでは気にしなくて良いです。
※活性領域
トランジスタの出力特性(コレクタ電流Icーコレクタ電圧Vce特性)における3つの領域(飽和、活性、遮断)のうちの1つで、トランジスタを増幅に使う場合に使用する領域



ベース抵抗がトランジスタの故障を防止できる理由

等価回路から、BE間はダイオードそのものです。
ベースに電圧を加えることは、ダイオードの順方向に電圧を加えるのと同じです。

従って、ほぼショート状態となるので、電流が無限大に流れてトランスタが壊れます。
または、Vin側(マイコンなどの制御IC)が過大な電流を流すことができず壊れる場合もあります。

Ib = (Vin ーV be)/ 0 ≒ Vin/ 0 = ∞ と無限大に流れてトランジスタが壊れる
  Vbeはダイオードの順方向電圧だが、0.6V程度と小さいので、ここでは無視

ベース抵抗をつけることでダイオードに流れる電流を制限でき、トランジスタ故障を防ぎます。

Ib = (Vin -V be) / RB ≒ Vin / RB で決まるので電流が制限され、トランジスタを保護
 Vbeはダイオードの順方向電圧だが、0.6V程度と小さいので、ここでは無視

ベース抵抗がトランジスタの動作を安定させる理由

ベース抵抗なしに電圧を加えるとベース電流が過大になって壊れると話しました。

トランジスタの動作を安定させるにはベース電流を一定に制御することが必要ですが、
ほぼショート状態ともいえる順方向のダイオードに電圧を加えて、
流れる電流を一定に調整するのが難しいことは感覚で分かるかと思います。

実際のトランジスタではどうなるでしょうか?
下図は東芝製トランジスタ2SC1815にベース電圧を加えた時に流れるベース電流です。
 ※2SC1815は、トランジスタの代表例としてよく挙げられる機種です。東芝製は廃止されましたが、海外メーカで生産されています。

この特性図から見てわかるように、
ベース電圧のわずかな変化で、ベース電流が大きく変動しています。

このように、ベース電圧でベース電流を調整するのは難しいことが分かります。

ベース抵抗をつけることで、ダイオードに流れる電流は Ib=Vin/Rb になります。
つまり、入力電圧Vinでベース電流Ibを調整することができるようになります。

Rb=1kΩとして、Vin=5Vに設定時、Vinが+10%変化(5V→5.5V)した時のベース電流Ibは、
Ib = V/Rbより、Ib = 5→5.5 mAとなるので、ベース電流も入力電圧と同じく+10%変化します。

ベース抵抗がない場合は、入力電圧+10%で電流が30倍も変化していたのと比べ、
安定しているのがわかります。

従って、ベース抵抗を設けることで、入力電圧のわずかな変化でベース電流が大きく変動することはなくなるので、トランジスタの動作を安定させることができます。

ベース抵抗によりトランジスタを電圧制御できるようになる理由

このように、ベース抵抗をつけることで、入力電圧でベース電流を調整できるようになります。

このことは、電流駆動型デバイスであるトランジスタを電流でなく、電圧で調整できるようになることを意味します。

ベース電流はIb = Vin/Rb で決まり、コレクタ電流はIc=hfe×Ibで決定されるので、
入力電圧Vin2倍でIcも2倍になります。つまり、入力電圧とコレクタ電流は比例します。

これによって、扱いにくい電流でなく、電圧でトランジスタを制御できるようになります。
電圧制御可能になったことで、マイコン等のデジタルICを用いてトランジスタを制御できます。

このベース抵抗を内蔵したトランジスタも販売されており、
デジタルトランジスタ(通常デジトラ)と呼ばれています。

入力電圧で出力をON/OFFすることができ、その名の通り、
トランジスタをデジタル制御することができます。

デジタルトランジスタには、ベース抵抗だけでなく、
ベース・エミッタ間抵抗Rbeもついているものもあります。

デジタルトランジスタ

この抵抗もベース抵抗同様、トランジスタ動作には必要な抵抗になります。
ベース・エミッタ間抵抗Rbeがついている理由については、別途掲載しています。

次回はベース抵抗の決め方について説明します。

 <FETのゲート抵抗の決め方など、トランジスタ設計に関するまとめ記事です>

 <以下の記事で、トランジスタを使った回路工作で役立つ工具類を紹介しています>