【流せる電流や被覆の剥き方もわかる】電線の種類と選び方 | アナデジ太郎の回路設計
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【流せる電流や被覆の剥き方もわかる】電線の種類と選び方

電線の被覆の剥き方 部品選定

この記事でわかること

・ケーブルの種類と特徴
・電線の太さ(AWG、SQ)と許容電流の決め方
・ケーブルの被覆の剥き方

本記事では、主に電子機器内に使用する電線を選定するための知識として、
種類や特徴、太さに応じた許容電流の決め方を説明し、
ケーブルの被覆を剥く方法についても解説します。

ケーブルの種類と特徴

電線の種類については、電線内の導体部分が1本の金属線で構成される単芯線と、
複数の金属線(素線)が撚り合わさって構成される撚線の2種類が存在します。

単芯線と撚線

単芯線は硬く、曲げた時の形状を維持するため、基板上で配線するジャンパー線など
複雑なルートを維持した状態で配置したい場合に向いていますが、
細い線は何度か曲げると折れてしまうので注意が必要です。

単芯線による基板へのジャンパー接続

撚線は柔かく、曲げても元に戻ろうとするため、直角配線には向きませんが、
曲げを繰り返しても折れにくいため、一般的な配線には使いやすいです。

導体の断面積は、同じ外径なら単心線の方が面積が広いので許容電流は大きいですが、
高周波の場合、表皮効果の影響で導体表面に電流が集中するため、
撚線の方が損失(発熱)を低減できることから、トランスの巻線などに使用されます。

巻線に利用される撚線はリッツ線と呼ばれており、詳しくは下記記事で解説しています。

次に電線の構成として、ケーブル内に電線が1本入っている単芯ケーブルと、
複数本の電線が入っている多芯ケーブルがあります。

単芯ケーブル
 内部に導体が1つだけなので、多芯と比べ他の導体からノイズの影響を受けにくく、
 発熱も低くなるので許容電流を大きくできます。
 また、構造がシンプルなので、被覆を剥く等の加工がしやすい利点もあります。

単芯ケーブル UL1007電線

多芯ケーブル
 複数配線を1本にまとめることで簡素化でき、配線スペースを小さくできます。
 主な多芯ケーブルに、キャブタイヤケーブルフラットケーブルがあります。

キャブタイヤケーブル
 名前の由来は、キャブ(辻馬車)のタイヤから来ており、
 複数の単芯ケーブルをタイヤの様にゴム製のシースで覆った構成となっています。
  ※キャプタイヤケーブルと呼ばれる場合もあります。
  ※単芯のキャブタイヤケーブルもあります。

キャブタイヤケーブル

 シースの材質にはゴム製以外にビニル製もあります。

 ゴム製は紫外線に強く、耐環境性に優れているため、主に屋外向けに使用され、
 ビニル製は柔軟性、耐水性、耐熱性に優れていることから、
 一般的な屋内用の電子機器にはビニル製のVCT(耐圧600V以下)や
 VCTF(耐圧300V以下)が用いられています。
  ※VCTはキャブタイヤケーブル、VCTFはキャブタイヤコードと呼ばれます。

VCTキャブタイヤケーブルの断面写真

フラットケーブル
 リボンケーブルとも呼ばれ、複数の単芯ケーブルを並列に束ねた平型の形状で、
 各ケーブル間は1.27mmや0.635mmの一定ピッチとなっていることから、
 コネクタを圧接することで、多数配線の接続を一度で行うことができます。

フラットケーブル用コネクタ

 使用される単芯ケーブルの太さは、1.27mmピッチがAWG28、
 0.635mmピッチではAWG30が一般的です。(AWGについては後述)

ブリッジ形フラットケーブル

 種類として、各単芯ケーブルが全て融着(繋がっている)されているブリッジ形
 一定間隔で非融着部分があるスダレ形があります。

スダレ形フラットケーブル

 スダレ型はブリッジ形に比べて柔らかいので曲げやすく、
 筐体内でケーブルの引き回しが容易で、可動部の配線にも適しています。

 但し、非融着部分はコネクタを圧接できないため、
 コネクタ間の距離(ケーブル長)を決める際は制約があります。

ツイストペア形フラットケーブル

 ブリッジ形は各単芯ケーブルの間隔が一定なのでインピーダンス整合しやすく、
 一定間隔でない部分があるスダレ形よりノイズの影響を受けにくいです。
 スダレ形には、ノイズ対策として未融着部分をツイストペアにしたタイプもあります。



電線の太さ

電線の導体部分のサイズ表記は次の2つが主に用いられます。

SQ(スケア)
平方ミリ(mm2)の英語表記square millimeter (スクエア ミリメータ)の頭文字から来た名称で、
導体部分の断面積を表します。
略称で「スケ」と呼ぶこともあり、2SQなら断面積2mm2になります。

AWG(エー・ダブリュー・ジー)
American Wire Gaugeの略称で、米国のUL規格で認定された電線に使用され、
数値が大きい程、細くなります。

AWGとSQとの対応表

この表では、一般的な電子機器での利用が多いAWG12~28を示しています。
規格ではAWG13などの奇数もありますが、実際のケーブルは偶数のものが多いです。

許容電流の目安

電流が流れることによる温度上昇で、電線の被覆(絶縁材)が劣化するのを防ぐため、
電線のカタログには許容電流が記載されているものもありますが、
製品によって導体の構成(※)や被覆の厚さが異なるため、
同じSQやAWGでも許容電流が異なります。

 ※素線の直径と本数で導体の構成を表現している。
   11/0.16mm・・・0.16mmの素線を11本撚り合わせ
   7/20/0.45mm・・・0.45mmの素線を20本撚り合わせた線を7本撚り合わせ

カタログに記載された許容電流には前提条件があり、
電線を1本のみ空中配線した状態で、周囲温度は40℃などの制約があることから、
電線を束ねたり、装置内に配線する実際の使用においては周囲温度が上がるため、
許容電流が減少します。

また、カタログに許容電流の記載が無い場合が多いことから、
電線に接続するコネクタの定格電流を許容電流とする方法が簡単です。

電線の許容電流に比べ、その電線の太さに適合するコネクタの定格電流の方が
殆どのケースで小さいので、流れる電流に対し余裕度を持たせた電線を選定できます。

ここでは一般的な電子機器によく利用されている
JST(日本圧着端子製造)製の3つのコネクタを例に挙げます。

PHコネクタ
2mmピッチで、小電流用に使用されています。 
AWG32~24(0.032~ 0.22mm2)の電線に適合し、定格電流は 2A(AWG24使用時)です。

PHコネクタ

XHコネクタ
2.5mmピッチで、汎用コネクタの定番品です。
AWG30~22(0.05~ 0.33mm2)の電線に適合し、定格電流は3A(AWG22 使用時)です。

XHコネクタ

VHコネクタ
3.96mmピッチで、電源などの大電流用に使用されます。
AWG22~16(0.33~ 1.25mm2)の電線に適合し、
定格電流は10A(AWG16使用時)、7A(AWG18使用時)です。

VHコネクタ

ここで、XHコネクタを使用した場合、AWG22で許容電流が3Aです。

AWG22の電線カタログを見ると、機器配線用の耐熱ビニル電線で
一般的によく利用されるUL1007で7A、UL1015で10Aと大きいですが、
複数の電線を束ねて機器内に配線した場合の周囲温度上昇を考慮すると、
許容電流を3Aにすることで、発熱による電線の劣化を防止できます。



電線の表面表記

UL規格で認定された電線は表面に規定された内容が印字されています。
但し、メーカーや製品によって表記の順番は多少異なっており、
一部省略される場合もあります。

UL認定電線の表面表記

①製品分類(UL規格)
 このULマークはUL Recognized(レコグナイズド)認証されたことを意味し、
 AWM(Appliance Wiring Material)は機器配線用電線であることを示します。

ULマーク リステッド認証とレコグナイズド認証

 レコグナイズド認証は製品内部で使用される部品・材料が対象であり、
 製品(完成品)が対象となるListed(リステッド)認証された製品に使用が認められています。

リステッド認証や、レコグナイズド認証の詳細は下記記事で解説しています。

③ULスタイル ナンバー
 ケーブルの仕様(構造や用途)を定義した分類番号が記載され、
 UL1015は機器配線用の耐熱ビニル電線で、定格電圧600V、定格温度105℃です。
 このUL1015や、UL1007(定格電圧300V、定格温度80℃)がよく利用されます。

代表的なUL電線 UL1007とUL1015

④導体サイズ
 AWGで表記され、写真のケーブルはAWG14で、図の方はAWG18です。

⑤難燃性(UL規格)
 VW-1(Vertical Wire)はUL規格の垂直燃焼試験の合格品であることを示します。
 このケーブルの定格温度は105℃です。

⑥メーカー名
 このケーブルは東日京三電線 製であることを示します。

⑦難燃性(電安法)
 -F- は電気用品安全法(電安法)の燃焼試験の合格品であることを示します。

⑧CSA規格と認定番号
 CSA (Canadian Standards Association)はカナダ規格協会が定めた安全規格で、
 認定番号(LL4619)は製品毎に取得された固有の番号です。

⑨製品分類(CSA規格)
 TEW(Thermoplastic Equipment Wire)は機器配線用の耐熱ビニル電線を示し、
 UL1015と両方の認証を持つ製品が多いです。

⑩定格温度、定格電圧
 定格温度105℃、定格電圧600Vであることを示します。

⑪難燃性(CSA規格)
 FT1は、CSA規格の垂直燃焼試験の合格品であることを示します。

⑫材質
 LF(Laed Free)は、絶縁材料に鉛を未使用(鉛フリー)であることを示します。



ケーブルの被覆の剥き方

単芯ケーブルの被覆を剥くには通常、ワイヤーストリッパーを使いますが、
キャプタイヤケーブル等の多芯ケーブルのシースを剥く場合は利用できません。

ワイヤーストリッパー

また、単芯ケーブルに使用する場合についても注意が必要で、
同じSQやAWGでも撚線を構成する素線の直径と本数が製品によって異なるため、
素線を切ったり、傷つけてしまう場合があります。

ワイヤーストリッパーによるケーブルの被覆剥き

ワイヤーストリッパーについては下記記事で紹介しています。

ここでは、カッターを使って、素線を傷つけずに多芯ケーブルのシースや、
単芯ケーブルの被覆を剥く方法を紹介します。

多芯ケーブルの場合

写真はVCTキャブタイヤケーブル(3芯×3.5mm2)です。

VCTキャブタイヤケーブル(3芯×3.5m㎡)

断面写真を見てわかるようにシース部分の厚みは均等でないため、
外周を同じ深さだけカッターで切ると、内部電線の被覆まで切ってしまう恐れがあります。

キャブタイヤケーブルの断面写真

そこで、次の手順でシース部分だけを切るようにします。

1.シース部分の外周を浅く切り込みを入れる
  断面を見て、シースが最も薄い部分の厚みを考慮して、切り込み深さを決めます。

キャブタイヤケーブルの被覆剥き手順1

2.切り込み部分が開く様に、手で掴んで広げる
  広げた時に内部電線の被覆が見えない場合は、広げた状態で刃を当てると、
  切り込みが少しずつ広がるので、被覆が見えるまで続けていきます。

キャブタイヤケーブルの被覆剥き手順2

3.内部電線の被覆が見えたら、周囲の切り込み部分も同様に広げる
  被覆が見えた部分から、ケーブルを回転させていき、
  見えてない部分についても、2.と同様の手順で少しづつ広げていきます。

キャブタイヤケーブルの被覆剥き手順3

4.ねじりながら引っ張ってシースを抜き取る
  ケーブルの外周全てで内部電線の被覆が見えるようになったら、
  シース部分をねじりながら引っ張ることで、シースが抜けます。

キャブタイヤケーブルの被覆剥き手順4

単芯ケーブルの場合

ここではキャブタイヤケーブルの内部電線を、多芯ケーブルと同様の要領で被覆を剥きます。

1.被覆の外周を浅く切り込みを入れる
  先程のシースより絶縁体(被覆)の厚みは均一ですが、
  薄いので切り過ぎると、内部の素線を傷つけてしまうので注意します。

単芯ケーブルの被覆剥き手順1

2.切り込み部分が開く様に手で広げる
  電線が細ければ、広げた時に導体部分が見えなくても、
  ある程度、強く広げることで、被覆が割けて導体部分が見えてきます。
  見えない場合は、広げた状態を維持しながら、
  慎重にカッターを当てて、切り込みを少しづつ広げていきます。

単芯ケーブルの被覆剥き手順2

3.導体部分が見えたら、周囲の切り込み部分も同様に広げていく
  導体が見える部分から、電線を回転させていき、
  見えてない部分も2.と同様の手順で少しづつ広げていきます。

4.ねじりながら引っ張って被覆を抜き取る
  外周全てにおいて、導体部分が見えるようになったら、
  除去する被覆を一定方向に ねじりながら引き抜く引くことで、
  撚線の場合、各素線同士が綺麗に撚れた状態で被覆を除去できます。

単芯ケーブルの被覆剥き手順3