振動試験の条件と決め方について

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この記事でわかること

・振動試験の条件と、その決め方がわかる。
 ※本記事は一般的な電子機器を対象とした場合について解説します。

振動試験の概要

振動試験は主に以下の2種類があります。
・正弦波振動試験(IEC /JIS C 60068-2-6)
  正弦波(サイン波)の振動を与える試験です。

  この試験は、振動数(周波数)を固定/変動させる2つの方法があります。
    振動数が固定 :固定振動数試験
    振動数が変動 :周波数掃引試験

・ランダム振動試験(IEC / JIS C 60068-2-64)
   ランダムな振動を与える試験です。
   ランダムと言っても、実際は複数の正弦波周波数を合成したものです。

  各周波数の強さは、PSD(Power Spectral Density  パワースペクトル密度)
  と呼ばれる値で設定され、周波数毎に強弱をつけることで、
  実際の環境に近い複雑な振動波で試験することができます。

本記事では、一般的な電子機器でよく用いられる周波数掃引試験について解説します。



振動試験の条件の決め方

正弦波振動試験の規格JIS C 60068-2-6では、

振動試験の設定条件として以下を定義しています。
  振動数範囲(下限・上限周波数)
  振動の振幅(変位、速度、加速度)
  試験時間(掃引サイクル数、時間
)

しかし、規格では実際の値については推奨値が示されているだけです。
つまり、振動条件の設定値は試験者が決めることになります。

試験を行う製品の使用する環境が決まっていて、
実際の環境の振動特性が分かっているときは,それを基にします。

しかし、リレーやスイッチなどの「部品」を振動試験する場合、
その「部品」を使用する「機器」がどのような環境で使用するか不明であり、
仮に使用環境が分かっていても、「部品」が受ける振動環境は
機器内での部品の取付状態によって、機器が受ける振動とは違う場合があります。

このようなことから、振動条件を決めるのは非常に難しいです。
規格で示している適用例から近いものを選択することが望ましいのですが、
特殊な製品の適用例が数点あげられている程度です。

という訳で、設定値ですが、次のような決め方が現実的かと思います。
 ・客先からの要求仕様があればそれに従う。
 ・過去の製品で試験していれば、その条件を基準にする。
 ・類似する製品の仕様を参考にする。

ここでは、一般的な電子部品や電子機器の製品仕様で良く用いられる試験条件を紹介します。

1.振動数範囲 
 規格では、以下に示す下限値上限値を推奨しています。 
  下限振動数:0.1、1、5、10、55、100 [Hz] 
  上限振動数:10、20、35、55、100、150、200、300、500、1k、2k、5k [Hz]

  一般的な機器は10~55Hzで試験されているものが多いようです。

2.振動の振幅 
 規格では、変位加速度について幾つかの値を適用例の中であげています。
   変位  :0.15、0.35、0.75、1.5、1.65 [mm]
   加速度 :5、10、20、50、100、200 [m/s2]

 汎用部品(センサー、リレー、スイッチ等)は変位(振幅幅)で規定され、
 1.5 [mm] 又は1.65 [mm]が多いようです。

 電子機器(スイッチング電源等)では加速度で規定され、19.6m/s2 (2G)をよく目にします。

        

TDKラムダ AC入力電源 HWS15A テクニカルデータより

3.試験時間
 規格では、掃引サイクル数 と、それに基づく耐久時間を推奨値としてあげています。
 掃引サイクル数とは振動数範囲を1往復したとき1回と数えます。
 (振動数範囲が10-55Hzなら、10Hz→55Hz→10Hz で1回)

 掃引サイクル数の推奨値は1、2、5、10、20、50、100となっており、
 それに基づく耐久試験時間を例として示しており、10-55Hzの場合は以下となっています。

    掃引サイクル数  耐久試験時間
      1        5分
      2       10分
      5       25分
     10       45分
     20       1時間45分
     50       4時間
    100       8時間

 一般的な電子機器の製品規格を見ると、
 掃引サイクル(10~55~10Hz)を1分間とし、
 これをX・Y・Zの各方向毎に試験時間1時間又は2時間が多いようです。

以上をまとめると、一般的な電子機器の場合、以下になります。
 ・振動数範囲 10~55Hz
 ・掃引時間  掃引サイクル(10~55~10Hz)を1分間
 ・振動の振幅 部品の場合:変位 1.5 又は 1.65[mm]
        機器の場合:加速度19.6m/s2 (2G)
 ・試験時間  X・Y・Zの3方向で各1時間又は2時間

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