作用時間、加速度とは? 衝撃試験の条件と決め方について | アナデジ太郎の回路設計

作用時間、加速度とは? 衝撃試験の条件と決め方について

信頼性評価

本記事でわかること

・衝撃試験の条件と、その決め方がわかる。
・振動試験や落下試験との違いがわかる。
 ※本記事は一般的な電子機器を対象とした場合について解説します。

衝撃試験の概要

一般的な電子機器を対象とした衝撃試験の規格として以下があります。
  ・衝撃試験方法(IEC /JIS C 60068-2-27)

この規格では、主に梱包されていない製品に衝撃が与えられた時に、
性能への影響を調べる試験方法について規定しています。

似たような試験で、振動試験落下試験がありますが、
 振動試験:正弦波やランダム波の振動を1時間~数時間継続して行う。
 落下試験:主に梱包された製品を所定の高さから自由落下させる。

衝撃試験は加速度をつけて落下させ、短時間(数十ms)の衝撃を加える点が2つの試験とは違います。
 ※衝撃試験も規格によって、様々な種類があるので例外もあります。



衝撃試験の条件の決め方

JIS C 60068-2-27では、衝撃試験の設定条件として以下を定義しています。
  ・パルス波形 (正弦半波、のこぎり波、台形波)
  ・ピーク加速度(衝撃の強さ)
  ・作用時間  (衝撃を与える時間)
  ・衝撃回数  (XYZ各方向に対して衝撃を与える回数)

 規格では、ピーク加速度・作用時間・衝撃回数の3つを「厳しさ」と呼んでいます。

しかし、規格では実際の値については参考例が示されているだけです。
つまり、衝撃条件の設定値は試験者が決めることになります。

規格では『輸送及び使用時の環境を再現した試験条件にするのが良い』としています。
しかし、現実には使用環境が不明なことが殆どだと思います。

仮に使用環境が限定され、衝撃条件が明確だととしても、
輸送時の方が過酷である場合が多く、試験条件を決めるのは非常に難しいです。

という訳で、規格で示している適用例から選択するのが現実的かと思います。
ここでは、一般的な電子部品や電子機器で良く用いられる試験条件を紹介します。

1.パルス波形 
 衝撃波の種類は以下の3種類があります。
  ・正弦半波  :正弦波(サイン波)の半サイクル
  ・のこぎり波 :立下り時間の短い非対称三角波
  ・台形波   :立上り及び立下り時間の短い対称台形波

 この波形の選択ですが、様々な要因で決まるものなので優先順位は無いですが、
 一般的な電子部品や機器の試験では正弦半波がよく用いられています。

2.ピーク加速度、作用時間
 ピーク加速度は上記で指定したパルス波形の強さを表します。
 作用時間はパルス波形の幅を表します。

規格では、ピーク加速度と作用時間の組み合わせを適用例の中であげています。
主な電子部品や機器が対象となる例は以下になります。

適用例は、製品が「部品」「機器」かで分けており、「部品」の方が条件が厳しいです。
これは、「部品」が受ける衝撃は機器内の構造(取付方向、固定方法など)によって、
「機器」が受ける衝撃より厳しい場合があると考えられます。

 ピーク加速度    作用時間    適用例
 150m/s2 (15G)   11ms     丈夫に梱包された機器

 300m/s2 (30G)   18ms     一般車両・鉄道・航空機に使用又は輸送される機器(※1)

 500m/s2 (50G)   11ms     丈夫に梱包された部品
                  ※1の機器に使用される部品
                  重工業装置に使用される部品
                 不整地を走行する車両に使用する機器(※2)
                 不整地を走行する車両に固定して輸送される機器(※3)
                 一般輸送機関で固定されずに輸送される機器(※4)
                  工業用運搬装置(フォークリフト等)で衝撃をうける機器

 1000m/s2 (100G)   6ms    不整地で輸送される頑丈に包装された部品 
                 ※2、※3、※4の機器に使用される部品
                 航空機用機器に使用される部品 
                 車両輸送で過酷な取扱いによる衝撃を受ける機器 
                 ポータブル機器

 上記の試験基準は強制ではなく、適用例として提示されています。
 このため、一般的な電子機器の試験では、
   ピーク加速度: 300m/s2 (30G)  作用時間: 11ms又は18ms
 がよく用いられているようです。

3.衝撃回数
 上記で決めた衝撃をX・Y・Z軸の両方向に各3回行うことを推奨しています。
 (つまり、6方向に各3回なので、計18回行う)

 ただし、『6方向全部に衝撃を加える必要がない場合は変更して良い』としています。
 例えば、左右・上下対称の製品や、衝撃をうける可能性が低い方向がある場合です。

 一般的な電子部品や機器の試験では、製品の輸送時及び使用時の設置状態に対して、
 X・Y・Z軸の3方向で行うことが多いです。

 製品が縦置き/横置きで使用する場合は、ぞれぞれの場合の3方向で行います。

次回は衝撃試験を実際に行う際の手順と、費用や時間について解説します。

  <回路工作で役立つ工具類を以下の記事で紹介しています>

  <振動試験については、以下の記事で解説しています>

  <EMC試験については、以下の記事で詳しく解説しています>