この記事でわかること
・振動試験に必要な治具の作り方、試験手順、費用、所要時間がわかる。
※本記事は一般的な電子機器を対象とした場合について解説します。
振動試験の条件について
試験を行うにあたり、試験条件(振動数範囲、振幅、試験時間)を決めておきます。
試験条件の決め方については以下の記事を参照下さい。
振動試験に用いる治具の作り方
試験前の準備として、試験機に製品を固定するための治具板を作成する必要があります。
この治具板は試験機が振動する部分と製品とを接続するために使用します。
例として、東京都産業技術研究センター(都産技)の振動試験機用の治具の作り方を紹介します。
この振動試験機は1軸(上下方向)に振動する試験機で、振動する部分にサイコロ治具と呼ばれるアタッチメントがついています。
治具板はこのサイコロ治具のネジ穴に合わせる必要があります。
治具板は厚さ10mm以上のアルミ板を使用します。
下図に示す寸法で、取付穴(Φ12mm)を開けます。
この穴とサイコロ治具のネジ穴と合わせてネジ止めすることで、サイコロ治具と治具板を固定します。
次に、製品が治具板の中心にくるように、製品を治具板に固定するネジ穴を開けます。
穴サイズと寸法は、製品の取付穴と合うようにします。
この穴は取付ネジを固定するため、ネジ溝を設ける(タップ加工する)必要があります。
振動試験の試験手順
振動試験は以下の手順で行います。
1.用意した治具板を振動試験機に取り付けます
2.治具板に製品を取り付けます
3.振動試験を実施
4.振動方向を変えるため、治具板と製品を付けなおします
以上の手順をXYZ方向毎に行います。
治具板をサイコロ治具の上面及び側面に取り付けることで3方向に振動させることができます。
短軸振動試験機の場合は、一方向しか振動できないので、
振動する方向を変更する際は、治具板や製品の取付方向を都度変更する必要があります。
多軸振動試験機の場合は、XYZ方向に振動できるので、軸方向を変更する必要はありません。
振動試験の所要時間
別記事「振動試験の条件と決め方について」で説明しましたが、
一般的な電子機器の例で、X・Y・Z各1時間とした場合、合計3時間かかります。
更に振動方向を変更するため、治具と製品を付けなおす時間を各10分とすると、
60分x3軸+交換時間10分x2回=200分
この時間は製品使用時に設置する方向が1つの場合です。
つまり、縦置き及び横置きで使用する製品の場合、
それぞれの状態で3方向行うので、2倍の試験時間がかかります。
時短策としては、重量・サイズが小さい小型機器ならば、縦置きと横置きを2台同時に治具に取り付けて試験します。
振動試験の費用について
比較的安価な公共の試験場の場合は以下になります。
東京都産業技術研究センター(都産技)の場合(2021年1月現在)
振動試験 機器利用費 ¥2,700/h(中小企業の場合¥1,350)
(初回利用時は機器利用指導料¥2,260(中小企業の場合¥1,130)別途必要)
この金額は機器利用費なので、試験は自分達で行います。
(最初に説明は受けるので、操作方法は知らなくても大丈夫です)
先程の試験時間200分の例にとると、機器の設定時間等も考慮して4時間かかるとした場合、
¥2,260+¥2,700x4時間=¥13,060 となります。
<回路工作で役立つ工具類を紹介しています>
<衝撃試験については、以下の記事で解説しています>
<EMC試験については、以下の記事で詳しく解説しています>