この記事で分かること
・MOSFETのゲート・ソース間抵抗の決め方がわかる。
・ゲート・ソース間抵抗がついている理由がわかる。
FETは大別して、接合型(JFET)とMOS型(MOSFET)があります。
本記事では、MOSFETを単に「FET」と呼ぶことにします。
結論 FETのベース・ゲート抵抗値の決め方
ゲート・ソース間抵抗RGSは
以下の3つの条件を満たすようにします。
・RGS > 10 x RG
ゲート抵抗RGの10倍以上の値にする。
※RGの決め方は、「ゲート抵抗の決め方」を参照下さい。
・RGS > VOUT/ IOUT
ゲート制御回路から電流が流れすぎないようにする。
VOUT :ゲート制御回路の出力電圧
IOUT :ゲート制御回路の出力電流(ソース電流)
・ RGS < Vth / In
ノイズ電流がゲートに入ってもONしないようにする。
Vth:FETのしきい値電圧*
In:ノイズ電流(数uA程度)
*しきい値電圧はFETのデータシートに記載されています。
一般的にRGSは4.7kΩ~22kΩの範囲で使用されており、10kΩが最も多いです。
これらの理由について説明します。
FETにゲート・ソース間抵抗がついている理由
RGSがついている理由は以下になります。
・ゲート制御回路からの信号が無い場合、FETがオンするのを防ぐため
起動時にゲート制御回路が動作するより早く、FETのドレイン(D)に電圧が印加された場合、
ゲート信号入力が未接続状態と同じになるため、ゲート電圧が不安定となり、
FETがオンしてしまう恐れがあります。
また、電源オフ時も、ドレインに電圧が残っている状態で、
ゲート制御回路が先に停止してしまうと、同様なことが起こる可能性があります。
RGSをつけることで、ゲート制御回路からの信号がない場合、
ゲート電圧が0Vに固定されることで、FETがオンすることを防ぎます。
・ゲート制御回路がVGS=0Vにするのをサポートするため
FETのGーS間はコンデンサに置き換えることができます。
VGSを下げるには、このコンデンサに充電された電荷を流す必要があります。
ゲート制御回路の出力インピーダンスROUTが大きいと、シンク電流が小さくなり、
このコンデンサが十分に放電されずVGSが0Vまで下がらない場合があります。
※シンク電流:回路やICに流し込むことができる電流。台所の流し台(シンク)と同じで水(電流)を流し込める量
インピーダンスと聞くと、難しく感じるかもしれませんが、
ここでは、ゲート制御回路内の出力とGND間にある内部抵抗と考えて下さい。
RGSをつけることで、コンデンサの電荷をRGS経由でも流すことができるので、
十分に放電することができ、Routが大きくてもVGS=0Vまで下げることができます。
ゲート・ソース間抵抗の決め方
RGSは以下の3つの条件を満たすようにします。
・RGS > 10 x ゲート抵抗RG
制御回路からの電圧VinがRGとRGSで分圧されて、ゲートに入力されるため、
RGSが小さいとVGSが低くなり、FETが完全にONできなくなる場合があります。
データシートのID-VGS特性から、流そうとしているIDに必要なVGSを求め、
その値より高い電圧がゲートに入力されるようにRGSとRGの比率を決めます。
ここでは、目安としてRGの10倍以上の値にすれば問題ないです。
RGは「ゲート抵抗の決め方」で決めることができるので、RGSも求まります。
・RGS > VOUT / IOUT
VOUT:ゲート制御回路の出力電圧
IOUT :ゲート制御回路の出力電流(ソース電流)
RGSをつけることで、ゲートOFF時にVGS=0Vにするのをサポートすると説明しましたが、
RGSが小さすぎると、今度はゲートON時にソース電流を超える電流が流れてしまい、
Voutが低下して、FETが完全にONできない場合があります。
※ソース電流:回路やICから出力できる電流のこと
このため、ソース電流値を超えないようにRGSを大きくします。
・RGS < Vth/(ノイズ電流)
RGSが大きすぎると、ノイズが流れた時にVGSが上昇してONしてしまう可能性があります。
ドレイン(D)に急激に高電圧が加わった場合、GーD間のコンデンサ成分により、
ゲートに微小電流が流れます。
低電圧駆動タイプのFETはしきい値電圧Vthが1V以下のものがあるので、
例えばゲート信号に1uAのノイズがゲートに流れてきた場合、RGS=1MΩにすると、
VGS = IxRGS = 1uAx1MΩ = 1V
となり、Vthが1V以下ならオンしてしまいます。
このため、uAオーダの電流が入っても、しきい値Vthを超えないようにRGSを小さくします。
これらの条件を満たすゲート抵抗RGSの抵抗値ですが、
一般的には4.7kΩ~22kΩの範囲(10kΩが最も多い)であれば基本的には問題ないです。
<ゲート抵抗RGの求め方等については下記で解説しています>
<FETの安全動作領域(SOA)の判定方法を解説しています>
<FETのスイッチング損失の計算方法について解説しています>
<回路工作で役立つ工具類を下記の記事で紹介しています>