この記事で伝えたいこと
・回路設計に向いている人の特徴
・回路設計力が向上する方法
・回路図が読めるようになるには
このたび、本ブログは100記事を達成しました。
ここまで来るのに4年以上かかりましたが、
読者の皆様からの温かい声援に支えられ、大変感謝しております。
本記事は100記事達成記念として、30年以上回路設計を続けてきた経験から、
設計力の向上に役立った方法などをお伝えします。
今回はいつもと違い、あくまで著者の主観や感想となるため、
必ずしも参考にならないかもしれませんが、
皆様の回路設計を行う上での一助になれば幸いです。
回路設計に向いている人、向いていない人
いきなり上から目線の偉そうなタイトルですが、
この記事を見ているという時点で、あなたは回路設計に向いています。
その理由は『回路設計』そのものに興味があるからです。
そうでなくては、具体的な回路技術について何の記述も無い、
無名のアラ還が書いたブログなど見に来ない筈です。
興味や関心があることが全ての行動の源になるため、
学習や体験を通し、回路設計者としてのレベルは確実に向上していきます。
向いているかどうかは、現在の知識やスキルとは関係ありません。
私は回路設計を30年以上続けてきましたが、知識やスキルで適正を判断したら、
今でも分からない事の方が圧倒的に多いし、
半田付けや基板改造については、むしろ下手になっている有様なので、
回路設計者には向いていないと言えます。
若い時に出会ったベテランの先輩方の持つ知識や、職人技の半田付けや改造技術も
いつか自分も到達できると思っていたのですが、未だ遠く及ばないです。
そんな私でも、ここまで継続できたのですから、
本ブログの記事に関心を持って見に来た読者の方が向いていない訳がありません。
回路設計力が向上する方法と習慣
回路設計力が向上するオススメの方法を3つ紹介します。
・回路や実験の写真を撮りまくる
・回路図に手書きでメモする
・質問する際は十分な準備をする
<回路や実験の写真を撮る>
設計した回路や基板の写真だけでなく、
評価中の実験環境の写真を撮りまくって下さい。
動画も撮れれば更に良いです。
実験構成については、全体の構成が写っているものを含め、
各箇所の様々なアングルから撮影します。
特に、EMC試験など、社外の設備を借りて行う場合などは、
後で確認する時や、再び試験場に行く際の事前準備に効果を発揮します。
(本ブログのEMC試験の記事にある写真などがまさにそれです)
画像を残しておくことで、撮影時には気にもならなかった部分が、
後になって見た時に重要なノウハウになることもあります。
(例えば、配線に使用した電線径、コネクタや圧着端子の処理、機器への接続状態や配線の引き回し等)
昔はスケッチをするしかなく、どうしても抜け落ちた部分がありましたが、
今はスマホがあるので、好きなだけ撮ることができます。
<回路図に手書きでメモする>
回路図はCADで作成された綺麗な完成図面よりも、
実験の途中で、手書きで書き込んだメモが残る図面の方が
後になって何十倍も役に立ちます。
定数などを変更した経緯についても、理由や日付と共に書いておけば完璧です。
書く内容は分かったことだけで無く、分からない点について書くのも良いです。
(何故、この定数になったか分からないなど)
そのようなことから、図面は紙に出力したものに手書きで書き込んでいき、
途中で図面を改定した際は、旧Verの図面も捨てずに残しておきます。
保管図面が多くなったら、スキャンして電子化したものでも良いです。
私は30年前の手書きのメモが残る図面が今でも貴重な財産となっています。
<質問する際の準備は入念にする>
私はこれまでの経験から次のような結論に達しています。
『何が分らないのかを知ることができれば、半分理解できたようなもの』
何が分らないかを知らなければ、人に聞いたり調べたりすることもできません。
何が分からないかを知ることで、質問する内容も具体的になり、
相手に話が通じやすくなります。
<質問力を上げる>
若手技術者が質問してくる時に、質問のための準備不足を感じることがあります。
つまり、知りたいこと、分からない点がどこか、
相手に上手く伝えられていない場合があるのです。
私はそのような時、多分こんなことを知りたいのかなぁと予想し、
逆質問することで、相手が知りたいことを聞き出すようにしています。
なので、質問する側は口頭だけでなく、図やメモ書きなどを使い、
どうすれば相手に伝わるか考え、準備した上で聞いた方が、
早く適切な回答を得る事ができます。
(これも経験を積むことで、質問力も向上します)
また、質問できたとしても、解決しないこともあるかと思います。
その時、どうしても分からなかったとしても、分からなかったことを覚えておけば、
経験を積んだ後で、改めて聞いたり、調べてみると理解できることが多々あります。
<先輩から教わるためのノウハウ>
次に、「何が分からないか分からない」場合はどうするかについてです。
例えば、どこかの回路を流用して設計あるいは試作したが、
自分では正しい(もしくは何となく大丈夫だろう)と思っている時などです。
この時に行う方法としては、印刷した図面や、実際の試作品を見てもらい、
気になる点は無いか聞いてみることです。
同じ図面や実際の回路(基板)を見ても、人によって見るポイントは異なります。
そして、自分では気がつかなかった点を指摘してくれます。
それは、その人がこれまで失敗や苦労した貴重な経験から来ているので、
聞くことは確実にスキルアップに繋がります。
質問する相手の立場や性格などを考慮し、
図面を渡しておいて、そこに気になる点を手書きで書いてもらったり、
3分間だけ時間をもらい、一緒に図面や回路を見ながら気になる点がないか聞くなど、
方法を使い分けると良いです。
回路図が読めるようになるには
業務で回路設計をするにあたり、全くの白紙から設計することは殆どなく、
過去の回路図などを参考に取り組むことが多いことから、
他人の書いた回路図を読むことになります。
回路を入力から出力まで順に追ってみた場合、必ず分からない箇所が出てきますが、
まずは理解できる所を抑えます。
この時、理解できる箇所が所々に分散していても構いません。
最初は点在していた理解部分が、徐々に点と点を結ぶように繋がっていき、
最後は全体を理解できるようになります。
全体を理解できるまでには時間がかかり、自分が担当した回路だとしても、
全てを理解できずに終わる時もあるかもしれません。
しかし、その後、別の設計をした時に、同様な回路と出会い、
その時は以前よりスキルアップしていることで、理解できることがあります。
そのためにも、出来るだけ多くの回路図を見るように心掛けるようにします。
月刊誌のトランジスタ技術(トラ技)は非常に参考になりますが、
毎月買うのは厳しい場合は、興味のありそうなタイトルの時だけでも良いです。
また、それらの内容をテーマ毎にまとめたトランジスタ技術specialもあります。
参考までに、私が若手技術者向けの社内教育講師として使用した時の教科書を紹介します。
初級者向けのアナログ回路学習に適しています。
回路設計を30年以上やってわかったこと
最後に、設計者としてやっていく上で大事だと思っていることを述べます。
Do or Do not. There is no try(やるか、やらぬかだ。試しなどいらん)
これは、私が好きな映画スターウォーズに出てくるジェダイ騎士団の最長老ヨーダの名言です。
この物語の中で、若き主人公ルークがヨーダから訓練を受け、
難しい技に取り組もうとした際、ルークが「やってみる」と言ったことに対する言葉です。
この時の「やってみる」という言葉には、たぶん失敗するけど、
とりあえずやるというニュアンスが含まれていた為、
ヨーダは必ず成功させるという気持ちで取り組むことの重要性を説いたのだと思います。
回路設計では、やってみないと分からないことは確かにありますが、
それでも、何かをする時には成功させるという熱意を持って取り組むことで、
たとえ失敗したとしても得られるものは大きい筈です。
精神論と言われてしまうかもしれませんが、
人生の全てに共通することではないでしょうか?
そんな気がします。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
これからも「アナデジ太郎の回路設計」を宜しくお願い致します。